1970年にチューダーが同社初のクロノグラフ、「オイスターデイト」を発売してから半世紀が過ぎた。個性あふれるデザイン、汎用手巻きムーブメントから自社製ムーブメントへの変遷など、進化を続けるその歴史を辿る。
50年の節目を迎えたチューダー製クロノグラフの歴史を振り返る
SERIES 7000 “HOMEPLATE”
記念すべき最初のクロノグラフは、「オイスターデイト」と名付けられた。ベゼルの仕様が異なる3モデルが開発され、そのうち2モデルが市販された。いずれも手巻き式クロノグラフムーブメントであるVALJOUX 7734を搭載し、信頼性の高い実用クロノグラフとして人気を博した。デザイン面の評価も高く、独特のインデックスの特徴から、ファンからは「ホームベース」と呼ばれ親しまれている。
SERIES 7100 “MONTE CARLO”
続いて、1971年に登場したのはカジノのルーレット盤を想起させるダイアルから、「モンテカルロ」と呼ばれているモデルである。ムーブメントはVALJOUX 234に変更された。前作のカム式からコラムホイール式に改められたことで、クロノグラフ機構のより精密な制御が可能となった。また、ブルーのカラーバリエーションモデルが登場し、特徴的なダイアルデザインと共に、今でも同社の代表するモデルの一つとして知られている。
SERIES 9400 AND 79100 “BIG BLOCK”
そして1976年、時代の波に乗り、チューダーのクロノグラフは遂に自動巻き機構を獲得する。絶大な信頼性を誇るクロノグラフムーブメントとして、今も数多のブランドが採用しているVALJOUX7750を搭載して登場したのが、通称“BIG BLOCK”である。自動巻き機構を収めるために厚めのケースを採用したことがその由来である。ムーブメントの変更によって、インダイアルが3つとなり、日付表示窓は袖口からも見やすい3時位置となった。ダイアル上の表記から、「クロノタイム」の名で呼ばれることもある。
79200 SERIES “SAPPHIRE CHRONOGRAPH”
前作から20年近く経過した1995年、洗練されたケースと耐傷性に優れるサファイアクリスタルガラスを纏った新しいモデルが発売された。丸みを帯びた柔らかな曲線を持つケースは、それまでの特徴を受け継ぎつつも、より優雅な印象をもたらしている。しかし、進化したのは外見だけではない。搭載されるムーブメントは、前作と変わらぬVALJOUX7750であるものの、刻印や金メッキ仕上げの施された各パーツ、ポリッシュ仕上げのスクリューなど、大幅に改良が加えられている。
2010, THE RETURN OF THE “HOMEPLATE”
2010年、チューダーはクロノグラフ発売40周年の年に新たなモデルを発表した。ホームベース型のインデックスを持つ「Ref.70330N」とブルーのカラーリングが印象的な「Ref.70330B」である。一目で分かる通り、これらは先述のSERIES 7000および7100を現代的にリファインしたモデルであり、多くのファンの心を鷲掴みにした。特に回転式のベゼルは、SERIES 7000において市場に出ることのなかった幻のモデルである「Ref.7033」から受け継いだ特徴であるということも人気の一因となっている。
2013, FASTRIDER AND MASTERING CERAMIC
2013年、チューダーはそれまでのクラシカルなクロノグラフとは異なるモデルを発表した。それが、「ファストライダー ブラックシールド」である。マットブラックのセラミックケースによって、スポーティなデザインを手に入れたこのモデルは、イタリアのバイクメーカーの公式タイミングパートナーである同社のモータースポーツに懸ける情熱を体現したモデルだと言えるだろう。
2017,A MANUFACTURE CALIBRE FOR THE BLACK BAY CHRONOGRAPH
2017年、それまで汎用ムーブメントを採用し続けてきたチューダーは、同社初の自社製クロノグラフムーブメント「MT5813」を搭載した「ブラックベイ クロノグラフ」を発表した。約70時間のロングパワーリザーブ、シリコン製バランススプリングなど、最新技術をふんだんに使用したこのムーブメントは、同社の新たなる時代の幕開けを告げるに相応しいスペックを誇り、多くのファンを驚かせた。