細やかな見直しが際立つA.ランゲ&ゾーネの新型「ランゲ1・タイムゾーン」

2020.06.25

GMTウォッチとワールドタイマーのいいとこ取りをした「ランゲ1・タイムゾーン」は、使い勝手に優れた広義のGMTウォッチである。2020年、A.ランゲ&ゾーネは本作を刷新。サマータイムマーカーが加わったほか、ディテールもいっそう洗練された。

広田 雅将(クロノス日本版):文
Text by Masayuki Hirota(Chronos-Japan)


A.ランゲ&ゾーネ「ランゲ1・タイムゾーン」

 A.ランゲ&ゾーネの「ランゲ1・タイムゾーン」はワールドタイマーのように見えるが、厳密に定義すると、改良版のGMTウォッチである。GMTウォッチと異なり、第2時間帯(ローカルタイム)の都市名が分かるほか、小さな24時間リングで第2時間帯を示すワールドタイマーに比べて、ずっと時間を読み取りやすい。

 その機能はジャガー・ルクルトの「マスター・コントロール・ジオグラフィーク」に似ているが、ローカルタイムだけでなくホームタイムにもデイ・ナイト表示が備わることで、使い勝手はいっそう優れている。なお、一部のワールドタイマーのように、ホームタイムの時針を1時間ごとに進められる機能はないが、独自の同期メカニズムにより、ホームタイム単独で時間の修正が可能だ。

新作のハイライト「サマータイム表示」

A.ランゲ&ゾーネ「ランゲ 1・タイムゾーン」
新型ムーブメントとサマータイム表示を備えた新作。サイズは前作にほぼ同じだが、ケース厚が0.1mm薄くなった。手巻き(Cal.L141.1)。38石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。(左)18KPG(直径41.9mm、厚さ10.9mm)。予価551万円。8月以降発売予定。(中)18KWG(直径41.9mm、厚さ10.9mm)。予価551万円(税別)。8月以降発売予定。(右)18KYG(直径41.9mm、厚さ10.9mm)。ブティック限定100本。予価585万円(税別)。9月以降発売予定。

 文字盤にはふたつのサブダイアルがあり、9時位置のものがホームタイムを、5時位置のものがローカルタイムを示す。ローカルタイムは文字盤外周の回転式24都市リングに連動しており、サブダイアル上の三角インデックスがローカルタイムのタイムゾーンに位置する都市名を指す。

こちらは前作。スペックはほぼ同じだが、デイ・ナイト表示の位置やスモールセコンドの針などが異なる。なお、旧型の方が文字盤の表示が細く見えるが、実物は逆である。搭載するムーブメントは、旧ランゲ1の搭載機をベースにしたものである。

 こういった基本的な機構はそのままに、細かな改良を加えたのが2020年の新作である。ベースムーブメントは旧ランゲ1用からグランド・ランゲ1搭載ムーブメントに変更。また、デイ・ナイト表示がふたつのサブダイアルの中心にそれぞれ移ったほか、24都市リングと連動するローカルタイム表示にはサマータイムマーカーが加わった。新作のハイライトがこの表示機構である。

5時位置には、従来に同じくローカルタイムを示すサブダイアルがある。三角インデックス内の表示が、サマータイムであることを示す「サマータイムマーカー」である。サマータイムを採用している都市は窓の内側が赤になる。写真では「ニューヨークはサマータイムを採用している都市で、(サマータイムを考慮しない)現在時刻は朝の7時50分」ということを示している。

 ローカルタイムを表示する5時位置のサブダイアル内には、前作に同じく、都市を示す三角インデックスがある。新しいランゲ1・タイムゾーンではこれが肉抜きされ、サマータイムを実施する都市を示すと、内側が赤色に変わるようになった。名称は「サマータイムマーカー」。しかし、サマータイムになっても第2時間帯の時刻が自動的に変わるわけではない。赤色の表示は、あくまでその都市がサマータイムを採用していることを示すだけだ。理論上、第2時間帯の時刻を自動的にサマータイムに変えることは可能である。しかし、機構が複雑になりすぎるため、A.ランゲ&ゾーネは、あくまでサマータイム採用表示のみに留めたのだろう。