F.A.ランゲの工房設立175周年を記念し、A.ランゲ&ゾーネは3種類の記念モデルを発表した。そのうちの1種類が「トゥールボグラフ・パーペチュアル・ハニーゴールド“F.A.ランゲへのオマージュ”」だ。このモデルは、5種類の複雑機構とハニーゴールド製ケース及びダイアル、そして特別な仕上げを施されたムーブメントが採用されている。世界限定50本で販売され、発売時期は2020年11月を予定している。
ケース、ダイアル、ムーブメント、すべてが特別な175周年記念モデルの最高峰
フェルディナント・アドルフ・ランゲがグラスヒュッテの町に懐中時計工房を設立してから175年の時が流れた。A.ランゲ&ゾーネは、その記念として3種類の限定モデルを発表したが、その中でも最も複雑な機構を備えるモデルが「トゥールボグラフ・パーペチュアル・ハニーゴールド“F.A.ランゲへのオマージュ”」である。このモデルは、2017年に発表された「トゥールボグラフ・パーペチュアル“プール・ル・メリット”」のケースとダイアル、ムーブメント装飾をアップデートしたモデルである。
ケース
ケースには、同社が専用使用権を有するハニーゴールドを採用し、一般的な18K合金よりも耐傷性に優れる。このハニーゴールドはケースだけでなく、ブラックロディウム仕上げを施したうえでダイアルにも用いられている。ダイアル上の立体的なインデックスは、植字やエンボスによるものではなく、ダイアルに直接施したレリーフ彫りによるものだ。その高さは約0.15mm。これによって、立体的かつシャープな印象となり、ダイアルに精悍さをもたらしている。
12時位置のムーンディスクもハニーゴールド製だ。盛り上がった月とその周囲に散りばめられた手彫りの星々が、ダイアル上に華やかさを与えている。
5つの複雑機構
このモデルの最大の特徴は、搭載された5つの複雑機構だろう。クロノグラフ、ラップタイムを計るためのラトラパント、100年間調整を必要としない永久カレンダー、重力や姿勢差による精度への影響を軽減させるトゥールビヨン、動力の伝達を一定に保つためのチェーン・フュジー機構だ。
同社は2005年の時点ですでにこれらのうち、永久カレンダーを除く4つの機能を持つ「トゥールボグラフ“プール・ル・メリット”」を発表していた。今回のモデルのベースとなった「トゥールボグラフ・パーペチュアル”プール・ル・メリット”」は、このモデルに永久カレンダーを加えたものであったが、既存のムーブメントに単にパーツを追加するだけでは実現することができなかった。ムーブメントの動力の流れが根本から変わるため、新たに輪列を設計することが必要となったのだ。
特に永久カレンダーとラトラパント・クロノグラフを同じムーブメントに同居させることは困難を極めた。クロノグラフ機能を使用中にカレンダーが切り替わる際、機構同士が干渉することによる動作不良や、振幅が低下することによる精度への影響をクリアしなければならないからだ。これらを克服できたのは、同社がこれまでに多くの複雑なクロノグラフを開発し、培ってきた豊富な経験があったからこそだろう。
ムーブメント
ムーブメントはそれらの機構を実現させるために、684個ものパーツによって構成されている。2017年の「トゥールボグラフ・パーペチュアル“プール・ル・メリット”」との違いは、往年のランゲ製懐中時計を彷彿とさせる、受けに施された粒状感を持たせた仕上げ、そして、緻密に彫り込まれたブランドロゴ等へのブラックロディウム仕上げ等だ。
その他各部の仕上げにも抜かりはなく、ブラックポリッシュされたトゥールビヨンの受け、トゥールビヨンキャリッジとテンプ受けに配されたダイヤモンドの受け石、同社ではおなじみのゴールド製チラネジ付きテンプ、ビス留め式ゴールドシャトン、テンプ受けのハンドエングレービングなど、「1Aクオリティ」に相応しい装飾がこれでもかと散りばめられている。
なお、このモデルは一般的にはグランド・コンプリケーションと呼んで差支えないほど、多数の複雑機構を備えている。しかしながらその名を持っていないのは、このモデルを凌駕する、7つの複雑機構を搭載した「グランド・コンプリケーション」を同社が既に発表しているからだ。
https://www.webchronos.net/2020-new-watches/44674/
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