先頃マーベル エンタテインメントとのコラボレーションを電撃発表したオーデマ ピゲ。かつての“T3モデル”などを筆頭に、ムービーカルチャーとの結びつきの中から、魅力的なモデルを数多く創造してきた同社だけに、第1弾コラボモデルの発表を心待ちにした愛好家も多いことだろう。ついに全貌をあらわした最初のスーパーヒーローはブラックパンサーだ。
Text by Hiroyuki Suzuki
ロイヤル オーク コンセプト “ブラックパンサー” フライング トゥールビヨン
オーデマ ピゲを率いるCEOのフランソワ-アンリ・ベナミアスが、15年以上も温め続けてきた夢。そのひとつが、マーベルと共に仕事をすることだった。それが急速に現実味を帯びてきたのは2017年のこと。長年にわたってベナミアスと親交のあった俳優のドン・チードルに構想を話すと、彼はその場でマーベルに電話をかけたという。ちなみにドン・チードルとは、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の中で、アイアンマンのバディを務めるジェームズ・ローディ役。2代目ウォーマシンその人だ。
3月18日に電撃発表された、オーデマ ピゲとマーベル エンタテインメントの長期的コラボレーション契約成立の第一報から約20日。我々時計愛好家の関心事はただひとつ。最初にダイアルを飾るスーパーヒーローは誰かということだった。これほどまでに期待がつのるのは、かつてオーデマ ピゲがムービーカルチャーとの結びつきの中から生み出した、T3モデルなどの快作が記憶にあるからだ。ついにお披露目となった最初のスーパーヒーローは、ブラックパンサーである。
1966年に発行されたマーベル・コミック(『ファンタスティック・フォー』第52号)で初登場したブラックパンサーは、アメリカのメジャーコミック史上初となったアフリカ系スーパーヒーローの元祖。その後『ジャングル・アクション』誌などで展開された独自のストーリーが人気を博し、MCUには第13作の『シビルウォー/キャプテンアメリカ』から登場している。
ワカンダ国王であるブラックパンサーをスーパーヒーローたらしめているものは、劇中に登場する架空の金属であるヴィブラニウムで作られたスーツ。アフリカの超先進国家ワカンダは、唯一のヴィブラニウム原産地という設定で、MCU作品の中でヴィブラニウムは、キャプテンアメリカの盾だったり、アイアンマンスーツの新しい動力源だったりと、あらゆるシーンで登場するのだ。
マーベルとのコラボレーション第1作となった「ロイヤル オーク コンセプト “ブラックパンサー” フライング トゥールビヨン」のケース素材はもちろんヴィブラニウム! ……ではなくて、ヴィブラニウムをイメージさせるTiとブラックセラミックスのコンビネーション。マットな質感の中でひときわ目を引くラグの彫り込みは、ブラックパンサーの鋭い爪で引き裂かれたような強い印象を与える。インナーベゼルやラバーストラップに施されたパープルカラーも、ヴィブラニウムが発する超絶的なパワーの表現だ。