ロレックスの歴史的なテストモデル「ディープシー・スペシャル」がフィリップスのジュネーブオークションに出品

2021.10.20

フィリップスが11月に開催する「第14回ジュネーブ時計オークション」にロレックスの「ディープシー・スペシャル」が出品されることを発表。1965年に製造されたこのモデルは今まで市場に出ておらず、水深1万mの水圧に耐えられるように設計されている。


水深10kmの水圧に耐える驚異的なロレックス

 イギリス発祥のオークションハウス・フィリップスは、2021年11月5日(金)と7日(日)に開催予定の「第14回 ジュネーブ時計オークション」に出品される、驚くべき稀少なロレックスを公表した。球状の風防が目を引く特徴的な外観の「ディープシー・スペシャル」は、いわゆる“普通のダイバーズウォッチ”とは一線を画する性能を持っている。

ロレックス「ディープシー・スペシャル」
1965年製。エスティメイト:120万〜240万スイスフラン。約1億4827万〜2億9654万円(1スイスフラン=123.56円、2021年10月18日現在)。

 1965年に製作されたこのモデルは、ロレックスの歴史の中でも重要な意味を持つ1本だ。今や多くの人が知る「オイスターケース」は1920年代に誕生したが、50年代に高い防水性能を持った時計の需要の高まりを受け、レジャーやプロダイバー、ミリタリーのいずれの用途に対しても、オイスターケースの開発を推し進めた。

 これは、単に防水性能を高めるだけではなく、深海の非常に高い水圧にも耐えられるような、プロフェッショナル用の時計の開発を行った。特筆すべきは、この革新的な決断が、53年にダイバーのための著名なツールウォッチ「サブマリーナ」を発表した時期と重なったことだ。

 ロレックスは、スイスの著名な海洋学者・技術者であるピカール教授による潜水実験によって、この時計をテストした。そこで得たテスト結果から、技術者たちは特殊な分厚いケースとドーム型のクリスタルを備えた、非常に高い水圧にも耐えられる時計の開発に着手した。

 53年、最初の試作機を潜水艇「トリエステ号」の外側に装着して耐水テストを実施。水深1080mのテストを経て、同年に3倍近くの3150mでの潜水にも成功。このような初期テストを終えた後、60年にはふたつ目の試作機を製作。海での水圧テストの前に、新型機を高圧室で事前に実験し、細部を少しずつ変更しながら、改良を重ねた。

 この時に製作された新しい「ディープシー・スペシャル」は、水深1万メートル以上の水圧に耐える、極めて過酷な条件でも機能するように設計された。本作のテストは、ピカール教授とアメリカ海軍のドン・ウォルシュ大尉とともに、最大水深約1万911mのマリアナ海溝で行われた。

 なお、始めに製造されたひとまとめの一部は他の実験に使用され、もう一部はピカール教授に託されたという記録が残っている。60年に行われた深海潜水に成功したあと、ロレックスはこの偉業を讃えて記念シリーズを製作。そのほとんどが、このモデルの開発に貢献した科学技術博物館や時計博物館、著名なパートナーなどに提供され、現在では世界有数の博物館が所有・展示している。

 このような特殊なモデルがオークションに出品されることは非常に稀で、最後のひとつが市場に出てから12年が経過している。また、ほとんどの個体は前述のような博物館などに保管されているため、次にいつ市場に出るかの検討すらつかないのだ。

 今回のジュネーブ時計オークションに、この稀少な時計が出品されることについて、フィリップスのヨーロッパおよび中東地域の時計部門責任者を務めるアレクサンドル・コトビは、次のようなコメントを残した。

「1万m(10km)の潜水に耐えられる時計というのは、まさに驚異的なことです。しかし、この作品の技術的な側面や稀少性以上に、その歴史的な意義を強調する必要があります。ディープシー・スペシャルは、今日のロレックスを定義づけた時計であり、その誕生の背景には、ロレックスがツールウォッチ全般、特にダイバーズウォッチに注力するようになった哲学があります。ディープシー・スペシャル無しでは、現在私たちが知っているようなサブマリーナやシードゥエラーは存在しません。ディープシー・スペシャルは、これまで一般に販売されることがなかった時計であり、このようなモデルが市場に登場することは、コレクターや時計愛好家にとって10年に一度の出来事と言えるでしょう。私たちは、このような素晴らしい時計の歴史的作品を託されたことを光栄に思います」

 ロレックスのサブマリーナをはじめとする、ダイバーズウォッチの発展に大きく寄与したディープシー・スペシャル。この先市場に出ることがないかもしれない、この稀少なモデルの行方を見届けたい。

フィリップスについて

 フィリップスは、200年以上の歴史を持つ、イギリス発祥のオークションハウスだ。20世紀および21世紀の美術・デザイン分野に特化し、全世界における美術品売買のプラットフォームを提供。モダンアートや写真、書物、時計、ジュエリーなどの分野に特化した専門家を擁している。ニューヨーク、ロンドン、ジュネーブ、香港のサロンでオークションや展示会を開催している。世界各地にオフィスを構え、東京など上記の都市以外でもサポートを行う。

 また、世界のどこからでもアクセス可能なオンライン オークションのプラットフォームを用意。オークションを通した売買の機会を提供するだけでなく、個人売買の仲介や、出品物の鑑定、評価などのサービスを提供している。


Contact info: フィリップス https://www.phillips.com/


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