A.ランゲ&ゾーネ、時計愛好家垂涎の“ルーメン”シリーズ第5弾「ツァイトヴェルク・ハニーゴールド “ルーメン”」登場!

2021.10.24

A.ランゲ&ゾーネの限定モデルの中でも、特に時計愛好家から絶大な人気を誇るのが、“ルーメン”シリーズだ。この“ルーメン”とは、同社のコレクションにおいて、「現代科学の知見を取り入れ、暗闇でも表示を読み取れる」という明確なコンセプトから生まれた、暗所でも十分に光を放つことで視認性を確保した特別仕様のモデルにのみ与えられる称号である。その第5作目となる最新限定モデル「ツァイトヴェルク・ハニーゴールド “ルーメン”」が、A.ランゲ&ゾーネにとって“特別な日”である10月24日に世界同時発表された。

鈴木幸也(クロノス日本版):取材・文 Text by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
(2021年10月24日掲載記事)

A.ランゲ&ゾーネにとって特別な日に発表された特別な限定モデル

 10月24日は、A.ランゲ&ゾーネにとって、特別な日である。1990年、第二次世界大戦後の東西冷戦による国家分断を経て、東西ドイツが再統一された年の12月7日、A.ランゲ&ゾーネは、創業家4代目にあたるウォルター・ランゲ(1924-2017)が、IWCとジャガー・ルクルトというふたつの時計ブランドの経営実績を持つ同じドイツ人のギュンター・ブリュームライン(1943-2001)の協力を得て、「ランゲ・ウーレンGmbH」という会社と「A.ランゲ&ゾーネ」というブランドをドイツのドレスデン地方裁判所に商業登記することで、正式に復興を果たした。そのA.ランゲ&ゾーネが再興後、初となるコレクションを発表したのが、それから約4年後の1994年10月24日だからだ。

1990年12月7日、ドイツのドレスデン地方裁判所に商業登記することで会社とブランドを再興し、それからわずか4年後の1994年10月24日には、4つのコレクションを発表するに至った新生A.ランゲ&ゾーネ。その偉業を成し遂げたふたりの立役者、ウォルター・ランゲ(右)とギュンター・ブリュームライン(左)。

 この日こそ、今や同社のアイコンである「ランゲ1」を筆頭に、「サクソニア」「アーケード」「トゥールビヨン “プール・ル・メリット”」というスイス時計とは明確に異なる個性を持ち、かつ鬼気迫るムーブメント仕上げで他を圧倒する4モデルを一挙に発表することで、ドイツ時計そして新生A.ランゲ&ゾーネの強烈な存在感を世界の時計業界に知らしめた、決して忘れることのできない日なのだ。

1994年10月24日、ランゲ・ウーレンGmbHは、新生A.ランゲ&ゾーネ初の新作として、「ランゲ1」「アーケード」「サクソニア」「トゥールビヨン “プール・ル・メリット”」という4つのコレクションを発表した。その会場にはドイツ語圏から60人のジャーナリストが招待された。新コレクションの写真パネルの横に立つのは、左から、ギュンター・ブリュームライン、ウォルター・ランゲ、そして当時の同社社長のヘルムート・クノーテ。


今や時計愛好家垂涎の“ルーメン” その最新作の全貌を明かす

 2021年、その記念すべき日に、A.ランゲ&ゾーネは新たな傑作を世に送り出した。今や“ランゲ愛好家”だけでなく、世界の時計愛好家垂涎の限定モデルとして、その名を馳せる“ルーメン”シリーズの第5作目にあたる「ツァイトヴェルク・ハニーゴールド “ルーメン”」である。

ツァイトヴェルク・ハニーゴールド “ルーメン”

A.ランゲ&ゾーネ「ツァイトヴェルク・ハニーゴールド “ルーメン”」
“ルーメン”シリーズ初となるハニーゴールド製ケースを採用したシリーズ第5作の「ツァイトヴェルク・ハニーゴールド “ルーメン”」。第1作の「ツァイトヴェルク “ルミナス”」では洋銀にブラックPVD加工されていたタイムブリッジは、今作では同じ洋銀だが、ブラックロジウム仕上げに変更され、半透明のダークカラーのサファイアクリスタルダイアル上で、パワーリザーブ表示の赤い差し色とともに、アクセントとして効いている。手巻き(Cal.L043.9)。61石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約72時間。18Kハニーゴールド(直径41.9mm、厚さ12.6mm)。3気圧防水。世界限定200本。ブティック限定取り扱い。予価1500万4000円(税込み)。

 この最新作は、文字通りその名が示すように、3つの点で特筆すべき限定モデルである。ひとつは何と言っても、A.ランゲ&ゾーネにおいても特に高い人気を誇り、故に入手困難な限定シリーズ“ルーメン”の最新作であるという点だ。その人気に火が付いた今となっては、詳細は不明でも“ルーメン”というだけで手を挙げるコレクターは決して少なくないだろう。


A.ランゲ&ゾーネが開発した夜光の秘密

“ルーメン”最大の技術的なトピックは、その名の語源である暗所で発光する蓄光塗料の光らせ方にある。その独創性は、紫外線を透過する半透明のコーティングをサファイアクリスタル製文字盤に施すことで成し遂げられた。通常の蓄光塗料は、常にむき出しの文字盤上のインデックスや針に塗布されるため、暗所で光を発するためのエネルギーは、光が当たる場所であれば、常に蓄光塗料に蓄積される。ところが、ツァイトヴェルクは、時分針とインデックスを持たず、3枚のディスクを用いて文字盤に設けられた開口部から時刻を表示する。したがって、たとえ各ディスクの数字に蓄光塗料を塗布したとしても、時刻を表示する時以外は、数字は常に文字盤に隠されてしまい、蓄光塗料は光のエネルギーを十分に蓄積することができない。

第1作の「ツァイトヴェルク “ルミナス”」同様、第5作の「ツァイトヴェルク・ハニーゴールド “ルーメン”」も時刻を表示する3枚のディスクは、黒地に蓄光塗料を塗布した数字が配されている(左)。蓄光塗料が光のエネルギーを蓄積するために、サファイアクリスタル製の文字盤にはA.ランゲ&ゾーネが独自に開発した紫外線を通す半透明のコーティングが施される。これによって、時と分を表示する開口部から見える数字以外は、半透明の文字盤によって見え方が抑えられるため、時刻の判読性は確保される。しかも、3枚のディスクの数字に塗布された蓄光塗料は、光がある場所では半透明の文字盤を透過した紫外線によって活性化され、暗所で発光するのに十分な光エネルギーを蓄積できる(右)。

 この技術的な問題を解決したのが、前述した光(紫外線)を透過する半透明のコーティングである。透明なサファイアクリスタル製文字盤では、光は通すが、同時に3枚のディスクも常に見えてしまい、時刻の判読性に支障を来す。光を通しつつも、時刻表示を邪魔しない程度にディスクを隠すことができる半透明なコーティングが重要なのだ。A.ランゲ&ゾーネが開発したこの半透明ダイアルコーティング法は、“ルーメン”シリーズ第2作となる「グランド・ランゲ1 “ルーメン”」を発表した2013年に特許を取得している。

“ルーメン”シリーズでは初めて採用されるハニーゴールド製ケース。A.ランゲ&ゾーネは、他のゴールド合金よりも硬く、特有の温かみと光沢を持つこの合金を、自然界に存在する同様の色と艶を持つ蜂蜜にちなんで、ハニーゴールドと名付け、2010年以降、限定モデルに採用してきた。ハニーゴールドは硬いため、写真のように、ポリッシュとヘアライン仕上げが一層美しい。赤味が強すぎないハニーゴールドの温かくやわらかい色味は、ブラックロジウムコーティングされた洋銀製のタイムブリッジとも相性が良い。ケースだけでなく、針とピンバックルもハニーゴールド製である。同社が専用使用権を有するハニーゴールドは、特許も取得している。


“ルーメン”初のハニーゴールドモデル

 次に、その“ルーメン”シリーズ初のハニーゴールド製ケースを持つという点も、これまでにはないまったく新しい点だ。「ハニーゴールド」は、A.ランゲ&ゾーネのタイムピースのために開発された独自の色調を持つゴールド合金で、同ブランドのみが専用使用権を有する特別な素材である。これまでのシリーズ4作はすべてプラチナ製ケースのため、“ルーメン”シリーズでは初めて“色を持つ”ケースが登場し、その華やかさも大きな特徴だ。

昼/明所(左)と夜/暗所(右)で劇的に表情を変えるのも“ルーメン”シリーズの大きな魅力のひとつ。半透明のコーティングが施されたサファイアクリスタル製文字盤越しの時刻表示ディスクの数字の見え方の違いにも注目。