2023年、ブランパンは初の現代的なダイバーズウォッチの発売から70周年を迎える。ブランパンは、これからの12 か月間、70、20、10 という鍵となる数字にちなんだタイムピースと特別な体験を発信する予定だ。「70」は、フィフティ ファゾムス誕生70 周年を表す数字。「20」はフィフティ ファゾムスの現代モデルの誕生とブランパン オーシャンコミットメント発足から20 周年、そして「10」はゴンベッサ探索プロジェクトの開始から10 周年を意味する。
2023年はフィフティ ファゾムス誕生70周年
「情熱は時間を忘れさせる。」そう語ったのは、1950 年から1980 年までブランパンのCEO を務めたジャン=ジャック・フィスターだ。自身がダイバーで時間を忘れるほど潜水に熱中し遭難した経験を持つフィスター氏は、十分な堅牢性、信頼性、耐水性、視認性を備え、水中で頼れるパートナーとなる時計を製作することを夢見ていた。そのような彼の創造的な探求から生まれたのは、世界初の現代的なダイバーズウォッチ。それ以降のダイバーズウォッチの定義を確立したとされる、数々の特徴を備えた時計だった。
初代フィフティ ファゾムス
ブランパンの工房で生まれたこの新しい時計に名前を付けるにあたり、文学にも情熱を傾けていたフィスターがインスピレーションを求めたのは、シェイクスピアの戯曲『テンペスト』に登場する「エアリアルの歌」だった。※Full fathom five thy Father lies,Of his bones are Corrall made:Those are pearles that were his eies,Nothing of him that doth fade,But doth suffer a Sea-changeInto something rich and strange.(五尋海の底に深く父は眠る、その骨は今は珊瑚、目は二つの真珠玉、その身はどこも消え果てず、海の魔法を身に受けて、今では不思議な宝もの)。この一説内にある五尋海からモデル名を決めたと言われる。フィフティは「50」、ファゾム「fathom」=(尋/ 水深=約1.83m)つまり50✕1.83=91.5m防水の意味もある。
フランス海軍中尉クロード・リフォ氏のフィフティ ファゾムスに対する評価(1955 年)
宛先:スピロテクニーク社責任者 殿
件名:ブランパン社製フィフティ ファゾムス防水時計について
参照:1955 年2 月3 日付の貴社からの書状
ブランパン社製No.166 フランス海軍用時計を受領したことをここに確認いたします。昨年、一年間にわたり軍の潜水任務にこの時計を使用してまいりましたが、その性能には大いに満足しております。
水深100m 地点での試験においては完全な防水性を示し、動作は良好。輝度も要件に合致しています。
潜水の際、水深53m 地点で時計1 点を紛失し、24 時間後に発見しましたが、その際も不具合は一切見られず、問題なく作動していました。
特筆すべきは、時計外部の可動パーツであるリューズで、これは潜水時に大変役立つものであると特に重視しております。何名かの将校が本時計を個人的に購入したいと申しておりますので、正式な価格をお教えいただければ幸いです。
フランス海軍中尉クロード・リフォ
ユベール部隊司令官。
1950 年代初頭、フランス海軍ではロベール(通称「ボブ」)・マルビエ大尉とクロード・リフォ中尉という二人の将校が潜水戦闘部隊の編成を担っていた。彼らはダイバーたちにとって欠かせない器材のひとつである時計の選考を行うこととなり、パリで市販されていた様々な時計の性能をテストした。ところが、その結果は惨憺たるもの。小さすぎて文字盤がほとんど読み取れず、ケースは防水とは程遠い代物だったからだ。スイスでジャン=ジャック・フィスターに会った将校たちは、試験用にフィフティ ファゾムスのサンプルを持ち帰った。その後、フィフティ ファゾムスは見事試験に合格。フランス海軍の公式ダイバーズウォッチとして採用されることとなる。正式な初回納品から1 年が過ぎた頃、クロード・リフォ中尉は、フランスでフィフティ ファゾムスの流通を担っていたスピロテクニーク社宛てに送った1 通の書簡の中で、潜水戦闘部隊が大いに満足していることを伝えている。
自身もダイバーだったジャン=ジャック・フィスター社長
南仏のスキューバダイビングクラブ「クラブ アルパン スマラン(Club alpin sous-marin)」でのダイビングバケーション中のジャン=ジャック・フィスター。1953 年に撮影されたこれらの写真で、彼はフィフティ ファゾムスを着用している。
海の時代が来ることを予見していたブランパン
「私たちの未来は海中にある」:文芸紙『ガゼット・リテレール』(1955 年7 月30 日・31 日)に掲載されたジャン=ジャック・フィスタ社長による記事。彼のメッセージは次のようなものだった。世界中を旅し、最後に残る手つかずの場所を訪れ、エベレストに登り、飛行機で各地を巡り…ついに海を探索する時が来ました。そこに広がるのはワンダーランド。鏡の国のアリスのように、そこへ行く方法を知ってさえいれば、誰でも行くことができる場所なのです。
米海軍公式ダイバーズウォッチにも認可
フィフティ ファゾムスを米海軍に供給する機会を見出したのは、ニューヨークの45 番街で宝石商を営んでいたアレン・トルネクだった。米国企業ではないブランパンは、米軍と直接取引をすることはできなかったが、トルネクにはそれが可能だった。取引の資格を得るためには、米国内に小さな試験施設を作り、米国内で時計の試験と認証を受けられるようにする必要があった。トルネクとブランパンはその後、見事契約を取り付け、かの有名なフィフティ ファゾムス「Milspec 1」が誕生。米海軍公式ダイバーズウォッチとなる。
米国最高峰の海軍特殊部隊ネイビーシールズも採用
最高峰の海底調査研究団体も採用
海底研究の世界的リーダーであるフランスの海底調査研究グループ(GERS:Undersea Study and Research Group)に採用されるなど、平和的用途にも活用された。フィフティ ファゾムスは、数々の賞を受賞した映画『沈黙の世界』の撮影で、ジャック=イヴ・クストーが率いる伝説のダイバーチームが着用する腕時計としても起用された。
マーク・A・ハイエックがフィフティ ファゾムスを再び進化に導く
1980 年代から2000 年代にかけて進化の歩みを緩めていたフィフティ ファゾムスは、マーク・A・ハイエックがブランパンのトップに就任したことを機に再び進化を遂げ始める。ハイエックもまた、数十年前のフィスターと同様、熱心なダイバーでした。ブランパンの保管庫でヴィンテージのフィフティ ファゾムスを発見し、フィスターが創り上げた時計に魅了されたハイエックは、その歴史と伝統を蘇らせることを誓った。
2003 年、フィフティ ファゾムス50 周年記念限定モデル
2003 年に発売されたフィフティ ファゾムス50 周年記念限定モデルでは、1953 年のファーストモデルと同じ文字盤の上に夜光塗料を施した大きな数字とマーカーを配して当時の意匠を踏襲した。ケースは従来のモデルと同じくステンレススチール製だが、2003 年モデルのケースはスクリューケース、スクリューロック式リューズ、厚いサファイアクリスタルを採用し、300m(約165 ファゾムス)の防水性を確保した。
初の海洋保護イニシアチブ「ジンベイザメ プロジェクト」
ブランパンがフィフティ ファゾムスの現代モデルの発表と同時に公表したのが、初の海洋保護イニシアチブ「ジンベイザメ プロジェクト」だ。これは海洋探査の分野でフィフティ ファゾムスが果たしてきた役割を引き継ぐものである。ブランパン、シャークトラスト、PADI プロジェクトAWAREによるこの共同イニシアチブの目的は、ダイビングコミュニティをひとつにまとめ、世界中のダイバーにジンベイザメの識別への協力を呼びかけ、保護のニーズを明らかにするのに役立つ包括的なデータを収集することにあった。
オーシャンコミットメント
フィフティ ファゾムスは、ブランパンの海洋保全活動のきっかけとなり、原動力となってきた。スキューバダイビングの発展と海洋世界の発見において重要な役割を果たしたこの時計によって、ブランパンは海洋コミュニティと密接な関係を築き、これまで70 年にわたりその絆を深めている。ブランパンのオーシャンコミットメントのひとつに、フランス人ダイバーで水中写真家、そして生物学者でもあるローラン・バレスタとのパートナーシップがある。ブランパンは、2013 年に行われた1 回目の探査から彼のゴンベッサ探索プロジェクトを支援している。
ゴンベッサ・プロジェクト
ローラン・バレスタのゴンベッサ・プロジェクトは、極めて希少で神秘のベールに包まれている海洋生物や自然現象の研究に重点を置いている。バレスタと彼のチームは、電子制御の閉鎖回路型混合ガス・リブリーザーを使用して極限の深さに到達し、他では得られない唯一無二の科学的データや写真、動画を収集中だ。その活動には常に、技術、科学、芸術という3 つの異なる性質をもつ様々な課題や挑戦が関わり合っている。
現在までに6 回の大規模なゴンベッサ探査と、その他数多くの水中ミッションが行われ、ブランパンはそのすべてに資金提供をしてきた。2013年、インド洋で行われた最初の探査の目的は、7,000 万年前に絶滅したと考えられていた先史時代の魚、シーラカンスを探すことだった。肉質的なヒレと「原始肺」をもつシーラカンスは、3 億7,000 万年前に海の生物が陸上に進出したことを示す特徴を有し、陸上に棲むすべての四肢動物が共通の祖先を持つことを示す生ける証でもある。水深120m よりも深いところに生息する極めて希少なシーラカンスは、これまで直接目撃された例はほとんどなかった。そんな中、ローラン・バレスタは南アフリカに渡り、特別な訓練を受けたダイバーや研究者らとともに生きたシーラカンスに接し、初めて広範な観察と科学実験を行った。ちなみに、バレスタのプロジェクト名「ゴンベッサ」は、シーラカンスの現地での異名に由来している。
フィフティ ファゾムスについて
1953 年に発表されたフィフティ ファゾムスは、現代のダイバーズウォッチの先駆け的な存在である。水中探査のニーズに応えるために一人のダイバーによって作られたこの時計は、プロダイバーの計時装置として世界中のダイビングパイオニアやエリート海兵部隊に選ばれてきた。防水性、堅牢な二重密閉構造のリューズ、自動巻きムーブメント、ダークカラーの文字盤に映える蛍光塗料を施したインデックス、逆回転防止ベゼル、耐磁性などの特徴を備えたフィフティ ファゾムスは、水中での任務に欠かせないダイビング器材となった。
ダイバーズウォッチの原型を築いたフィフティ ファゾムスの特徴的な主要パーツや機能は、今なおダイバーズウォッチのアイデンティティを定義づけている。
過去を継承すると同時に、未来をしっかりと見据えるフィフティ ファゾムスの現代モデルには、堅牢性と信頼性で定評のある新しいムーブメントが搭載されている。これらのタイムピースは、ダイビングにおけるブランパンの長年の経験と、ダイビングのリスクや必要性から考案された数々の技術的革新を体現しているのだ。
スキューバダイビングの発展と海洋世界の発見において重要な役割を果たしてきたフィフティ ファゾムス。この時計によって、ブランパンは海洋コミュニティと密接な関係を築き、これまで70 年にわたりその絆を深めてきた。フィフティ ファゾムスは、ブランパンの海洋保全活動のきっかけであり、原動力なのである。
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