かつて使用シーンやスタイルが限定的だったドレスウォッチ。時代は変わり、時計ユーザーのニーズが多様化するにつれて、各社からさまざまなドレスウォッチが展開されるようになった。そこで今回は、限られたシーンに留まらず、日常生活で装うことのできるドレスウォッチをランキングのお題とした。選考の条件として「過度に稀少ではない」「日常で使える防水性」「11mm以下のケース厚」「約2日以上のパワーリザーブ」「優れた視認性」を設けている。

[クロノス日本版 2024年1月号掲載記事]
2024年12月14日更新


毎日を装うドレスウォッチ

10位 IWC/ポートフィノ オートマティック

17point / 2persons

ポートフィノ オートマティック

IWC「ポートフィノ オートマティック 37」Ref.IW458601
1984年に誕生した、IWCのコレクション。イタリアのリグーリア海に面する漁村であり、高級リゾート地でもある「Portofino(ポルトフィーノ)」に名前を由来している。優美なラウンドケースに直線のラグ、そして12時位置と6時位置のローマ数字インデックスがアイコニックである。IWCの他コレクション同様、多彩なバリエーションが存在する中で、この「ポートフィノ オートマティック 37」は2022年にアップデートされたモデルだ。小ぶりでエレガントながら、約120時間のパワーリザーブを備えることが大きな特徴である。自動巻き(Cal.32111)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。SSケース(直径37mm、厚さ9.4mm)。5気圧防水。89万1000円(税込み)。(問)IWC Tel.0120-05-1868

●ユニセックスとしてもふさわしい、最近のレディースモデルにおける大径化を語る絶妙なサイズ感。ポイントダイヤモンドモデルなどは男性も衒いなく着けられるのでは。5気圧防水かつパワーリザーブ約120時間という使い勝手の良さも実に良い。(野上)

●優しいニュアンスのケースフォルムは、毎日に彩りを与える。(篠田)

9位 ゼニス/エリート クラシック

19point / 2persons

エリート クラシック

ゼニス「エリート クラシック」Ref.03.3100.670/01.C922
エル・プリメロと並んでゼニスの代表的なムーブメントとしても「エリート」の名前は知られているが、この名前が冠されたコレクションもある。20世紀中頃の、時計製造におけるデザインコードを再構築したドレッシーなコレクションで、ゼニスいわく「コンテンポラリーエレガンスというゼニスのビジョンの真髄を表現」しているという。本作は、前述したCal.エリート670を搭載。3針+デイトのみと機能はミニマルながら、文字盤に与えられた放射状のパターンが独創性にもつながっており、「さりげなく個性を演出したいドレスウォッチ」を探しているユーザーにはお勧めだ。自動巻き(Cal.エリート670)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径40.5mm)。5気圧防水。80万3000円(税込み)。(問)ゼニス ブティック銀座 Tel.03-3575-5861

●ダイアル表現も凝っており、手元が華やぐ。(篠田)

●ゼニスのエリートといえばドレスウォッチのコレクションだが、5気圧防水で約50時間のパワーリザーブを確保したのは日常使いを考えたからだろう。ただ、以前あった日付なしの「ウルトラシン」を復活させてほしい。(名畑)

8位 ブレゲ/クラシック 5177

20point / 2persons

クラシック 5177 グラン・フー・ブルーエナメル

ブレゲ「クラシック 5177」Ref.5177BB/2Y/9V6
ドレスウォッチの話題になると、必ずと言って良いほど名前が挙がるのが「クラシック 5177」だ。ギヨシェが与えられたモデルも人気が高いが、掲載しているのは優美なグラン・フー エナメル文字盤の1本。深いネイビーブルーに、ホワイトのブレゲ数字インデックスやロジウム仕上げのブレゲ針やコントラストを成しており、意匠として完成しているのみならず、高い判読性も備えている。自動巻き(Cal.777Q)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。18KWGケース(直径38mm、厚さ8.8mm)。30m防水。422万4000円(税込み)。(問)ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211

●ベゼルやラグを細くし、繊細さを際立たせる一方、ブレゲらしい深いブルーのグラン・フーエナメルを文字盤に採用することで、印象的な1本に。基本がシンプルなので、ブレゲ針やインデックスのフォントなども存在感十分。2針の5157も押したいが、パワーリザーブが今回の基準に足りなかった。(安藤)

7位 パルミジャーニ・フルリエ/トンダ PF

27point / 2persons

トンダ PF ミニッツ ラトラパンテ

パルミジャーニ・フルリエ「トンダPF ミニッツ ラトラパンテ」Ref.PFC904-1020001-100182
メタルブレスレットというとスポーツウォッチの印象が強いかもしれない。半面、薄く仕立て、かつ丁寧な仕上げが施された外装によって、ドレスウォッチとしても重宝されるモデルがある。パルミジャーニ・フルリエ「トンダPF」は、その代表格だ。掲載するのは、2023年にリリースされた1本だ。トンダ PFらしくすっきりとシンプルな顔立ちを備えつつ、「ミニッツ ラトラパンテ」を搭載していることがミソ。8時位置のプッシャーを押すことで5分、10時位置のプッシャーを押すことで1分、18Kローズゴールド製の針が進む仕様となっているのだ。普段、このラトラパンテ針は分針に隠れているため、プッシュボタンで進めた場所に分針が重なれば、進めた分の時間が経過したということが分かるのだ。自動巻き(Cal.PF051)。35石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。SS×Ptケース(直径40mm、厚さ10.7mm)。60m防水。465万3000円(税込み)。(問)パルミジャーニ・フルリエ pfd.japan@parmigiani.com

●「トンダ PF オートマティック」と迷ったが、一見シンプルなドレスウォッチに見えるのに、という意外性の意味から新機構搭載のこちらに。ミニマムな造形美と非常に美しい仕上げが、ドレスウォッチに求められるエレガンスを語るにもふさわしく。(野上)

6位 カルティエ/タンク マスト

31point / 2persons

タンク マスト

カルティエ「タンク マスト」Ref.WSTA0041
1977年に誕生した「マスト ドゥ カルティエ」を、2021年によみがえらせたモデルが「タンク マスト」だ。アールデコのスタイルを取り入れた、「タンク」シリーズを象徴する薄型レクタンギュラーケースを受け継いだこのモデルは、フォーマルでもインフォーマルでも装いたいドレスウォッチと言える。クォーツ。SSケース(縦33.7×横25.5mm、厚さ6.6mm)。日常生活防水。54万4500円(税込み)。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-1847-00

●「ドレスウォッチ」としてはずせない名作。この永遠不滅のフォルムがあればムーブメントはクォーツで十分満足ではないだろうか? 秒針も日付もない2針仕様というのもドレスウォッチの本道である。(名畑)

5位 クレドール/マスターピースコレクション 叡智Ⅱ

34point / 2persons

マスターピースコレクション 叡智II GBLT998

クレドール「マスターピースコレクション 叡智Ⅱ」Ref.GBLT998
2014年、「ノード 叡智」の後継機として発売された「叡智II」。「究極のシンプリシティ」をコンセプトに、世代を超えて受け継がれるドレスウォッチとして、クレドールからラインナップされている。掲載モデルは、2018年にラインナップに加わった18KPGケースのモデル。文字盤は、叡智の生誕地である「マイクロアーティスト工房」が位置する信州に降り積もる雪をイメージした、白い磁器となっている。同工房の職人が手書きで施したインデックスやブランドロゴとともに、必見のディテールだ。手巻きスプリングドライブ(Cal.7R14)。41石。パワーリザーブ約60時間。18KPGケース(直径39mm、厚さ10.3mm)。日常生活用防水。654万5000円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室(クレドール) Tel.0120-302-617

●手書きインデックスが印象的な磁器ダイアルにハンドフィニッシュのゴールドケース、トルクリターンシステムを採用したスプリングドライブCal.7R14を搭載と、日本の美意識とハイテクを見事にまとめた1本。本来はもう少し上位にしたいところだが、3針なので控えめの順位に。Cal.68系搭載の「ゴールドフェザー」も加わり、この分野でのクレドールの存在感はさらに高まりそう。(安藤)

4位 ショパール/L.U.C 1860

36point / 2persons

L.U.C 1860

ショパール「L.U.C 1860」Ref.168860-3003
1997年に発表された。「L.U.C」は、同社の創業者であるルイ-ユリス・ショパールのイニシャルを冠したコレクションである。ショパールのマニュファクチュールで製造されたさまざまなモデルがラインナップされる中で、掲載モデルは1997年発表の、ショパールのマニュファクチュール初となる同名のタイムピースに範を取ったもの。ギヨシェ装飾が施されたサーモンピンクの文字盤は3針のみと、端正な顔立ちを有している。ジュネーブシールを取得した、厚さわずか3.3mmの自動巻きムーブメントCal.L.U.C 96.40-Lは、トランスパレントバックから鑑賞することができる。自動巻き(Cal.L.U.C 96.40-L)。29石。パワーリザーブ約65時間。2万8800振動/時。ルーセントスティール™ケース(直径36.5mm、厚さ8.2mm)。30m防水。371万8000円(税込み)。(問)ショパール ジャパン プレス Tel.03-5524-8922

●「L.U.C」最初期に通じるヴィンテージルックにC.O.S.C.認定クロノメーターおよびジュネーブ・シールの品質証明取得、約65時間パワーリザーブの超薄型L.U.C 96.40-Lを搭載。言うことなし!(菅原)

3位 ロレックス/パーペチュアル 1908

42point / 3persons

パーペチュアル 1908

ロレックス「パーペチュアル 1908」Ref.52508
2023年にロレックスから登場した新しいコレクション、「パーペチュアル 1908」。スモールセコンドを備えたラウンド型のシンプルな腕時計ながら、フルーテッドとドームを組み合わせたベゼルの意匠が特徴的だ。シリコン製のシロキシ・ヘアスプリングが採用された自動巻きのCal.7140が搭載されており、パワーリザーブは約66時間を備える。このムーブメントは、ロレックスには珍しく、トランスパレントとなったケースバックからのぞくことができる。自動巻き(Cal.7140)。38石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約66時間。18KYG(直径39mm、厚さ9.50mm)。50m防水。

●程よい39mm径、10mmを切る薄型で約66時間パワーリザーブの自動巻き、スモールセコンドとブレゲ針を採用するヴィンテージルックなど、条件を満たす最高のモデルだ。欲しい!(菅原)

2位 ロンジン/ロンジン マスターコレクション

54point / 5persons

ロンジン マスターコレクション

「ロンジン マスターコレクション」 Ref.L2.843.4.73.2
2022年、ロンジン創業190周年記念モデルとして登場した、クラシカルな「ロンジン マスター コレクション」。時計愛好家を中心に大きな話題となったこのモデルを、スモールセコンド仕様にして翌年に打ち出したのがRef.L2.843.4.73.2だ。梨地のシルバー文字盤に、手彫りなのではないかと驚かされるような、微細加工機によって深く彫り込まれたインデックスや優美な青針が載せられており、一方で良心的な価格設定であることも相まって、「毎日を装うドレスウォッチ」として、ランキング2位も納得の1本である。

●ヴィンテージな味があるが復刻版ではなく、ヴィンテージな要素を巧みなアレンジで美しいタイムピースへと昇華させた名作。コッパー色のアラビア数字彫り込み文字盤など細かな作り込みも見事。(名畑)

●新旧のディテールをうまくミックスさせた傑作。広い見返しという今のデザイン要素をクラシカルなスモールセコンドと巧みに合わせている。ありそうでなかったドレスウォッチ。シリコン製ヒゲゼンマイとフリースプラングテンプの組み合わせもかなり実用的だ。(広田)

1位 オーデマ ピゲ/CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ オートマティック

57point / 4persons

CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ オートマティック

オーデマ ピゲ「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ オートマティック」Ref.15210ST.OO.A056KB.01
一見するとシンプルな腕時計だが、その実、オーデマ ピゲの独創性にあふれるモデルが本作だ。深みのあるグリーン文字盤には数百の小さなホールによって同心円状のサークルモチーフが作り上げられており、目を引く意匠となっている。「CODE 1159」の、ラウンドのアウターケースで八角形のミドルケースを挟み込む3層構造も健在。自動巻き(Cal.4302)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径41mm、厚さ10.7mm)。3気圧防水。379万5000円(税込み)。

●CODE 11.59初のSSモデルは、複雑なケース構造ながら10.7mmの厚さをキープ。約70時間パワーリザーブやバーインデックスによって向上した視認性も見どころ。スポーティードレスの新時代の代表格。(菅原)

●シンプル顔なのでドレッシーに装える。(篠田)