ペキニエ自慢の自社製ムーブメントは、シングルバレルで約88時間のパワーリザーブを有し、フラット3ディスクのジャンピングデイデイト表示は、時間帯を問わず操作可能。4時位置のサブダイヤルは第2時間帯、6時位置はデイ&ナイト表示というトラベル仕様のセミコンプリケーションである。自動巻き。SS(直径42.0mm)。2万1600振動/時。100m防水。111万円(税別)。
スイス時計産業のメッカ、ラ・ショー・ド・フォンから西に向かってフランスに入ること約25km。1973年生まれのウォッチブランド「ペキニエ」が工房を構えるのが、フランスのモルトーである。モルトーは昔から時計学校があり、卒業生の多くはペキニエかラ・ショー・ド・フォンで働いてきた。「Made in France」、1975年以降、この輝かしい響きはペキニエしか有していなかったのだが、2012年にリーマンショックの煽りを受けた同社は破綻寸前まで追い込まれる。しかし、IT系出身の出資者が現れ、経営は無事に引き継がれた。
ホワイトナイトが現れた理由の一つが、ペキニエが2010年に発表した自社ムーブメント「リューロワイヤル」だ。88時間のパワーリザーブ表示、瞬時に切り替わるデイ&デイトは時間を問わず操作可能、スモールセコンドもムーンフェイズも標準装備されたセミコンプリケーションで、さらに機能を追加できるスペースもある画期的な内容だった。「リューロワイヤル」はペキニエを飛躍させてくれる特効薬だったはずだ。だが、2016年12月に再び経営危機が訪れてしまった。2015年は、ほぼ全てのブランドが世界中でインバウンド景気に沸き、セールスレコードを塗り替えた。設備投資も盛んで、新工場の建設プランもそこかしこで検討され、実行された。ペキニエも好調だった。だがしかし、2016年に全世界からインバウンド消費が消えた。理由は中国政府が自国内での消費を守るべく、未申告の時計宝飾品を税関で発見した場合、60%の関税を掛けると発表したせいだ。
フランス政府は自国の企業育成目的でペキニエにも融資をしていたため、ブサンソンの商事裁判所は新たな経営者を見つける数カ月間の猶予を同社に与えた。そして5月中旬、ようやく新しい経営者が発表された。新社長 Dani ROYER氏(ダニ ロワイエ)36 才は、ヴァルフルーリエ、アーノルド&サン、カール・F・ブヘラでR&D部門の頂点を歩き、2014年からペキニエのR&Dトップを務めてきた経歴の持ち主。堅実な経営でペキニエに再び「Made in France」の輝きを取り戻してくれるよう期待したい。日本には「リューロワイヤル」ムーブメントの優秀さを好んで販売を止めなかった専門店がいくつもあるのだから。
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