機械式腕時計、手巻きを選ぶのか?自動巻きを選ぶのか?

2019.03.25
ETA2892A2
ETA2892A2
汎用自動巻きの代名詞的存在。初出は1978年。自動巻き機構はリバーサー式である。手巻き機構をコンパクトにまとめることで、量産自動巻きらしからぬ薄さを盛り込むことに成功した。なお現在はセリタやソプロードなどもETA2892A2の互換機を作っている。

 なお自動巻きには2種類ある。ローターの左右回転でゼンマイを巻き上げる両方向巻き上げ自動巻き、左右どちらかの回転でゼンマイを巻き上げる片方向巻き上げ自動巻き。どちらが優れているかは、メーカーによって見解が分かれる。ただ、デスクワークに向くのは片方向自動巻き、腕を振る人に向くのは両方向自動巻きという意見が多い。もっとも、今の自動巻きであれば、片方向か両方向かを問わず、比較的ゼンマイは巻き上がりやすい。また、高額な自動巻きの中には、ローターを重くして巻き上げを良くするため、外周にプラチナや金をあしらったものが多い。自動巻きの時計を買う場合は、腕にのせて振ってみること。ローターの回る感触は、ムーブメントによってまったく違うからである。

●片方向巻き上げ自動巻き

腕を少し動かすだけでゼンマイが巻き上がる、自動巻き機構がシンプルで済む
×巻き上げない方向ではローターが空転するため、腕に伝わるショックが大きい

 片方向自動巻きの代表的なムーブメントは以下の通り。

 ETA製の自動巻きクロノグラフ7750、ジャガー・ルクルト製の899と970系、ジラール・ペルゴの4500系、3200系、3300系、パテック フィリップの324系、240系、F.P.ジュルヌの1300系、ヴァシュロン・コンスタンタンの2450系など。一般的には、デスクワークでも良く巻き上がるのが片方向自動巻きといわれている。ただし代償として、ローターの回るショックが大きいムーブメントがある。

ETA7750
ETA7750
自動巻きクロノグラフを普及させた立役者。初出は1973年。クロノグラフにスペースを割くため、コンパクトな片方向巻き上げ自動巻きを採用した。ただしクロノグラフを小さくできる垂直クラッチが普及して以降、片方向巻き上げ自動巻きを採用するクロノグラフムーブメントは少ない。