【83点】IWC/パイロット・ウォッチ・クロノグラフ “トップガン・ミラマー”

2016.08.26

約68時間のパワーリザーブをたたき出すIWC自社製キャリバー89361。フルに巻き上げれば、ほぼ3日間、動き続ける。

 

空か陸か

 ここで、すべてのパイロット・​ウォッチに共通する疑問が生じる。時計愛好家のうち、いったい何人が実際にパイロットで、パイロット・​ウォッチをバックアップ用計器として利用する人々がどのくらいいるかという点である。当然、その数はごくわずかだろう。だが、この事実よりも重要なのは、良好な視認性やシンプルな操作性といったパイロット・​ウォッチならではのメリットが、日常生活でも付加価値となる点である。IWCの場合はデザインの魅力もこれに加わる。サイズダウンしたとはいえ、それでも大きな時計であり、男性的で力強い。ブラックカラーのケースと文字盤、それに、ミリタリーグリーンのストラップがかき立てるのは冒険心だけではない。パイロット・​ウォッチ・​クロノグラフ〝トップガン・ミラマー〟を身に着ければ、戦闘隊の一員になったような気分を味わえるだけでなく、ジャングルや砂漠、ステップ地帯で道なき道を行く探検に思いを馳せることができるのだ。

 だが、パイロット・​ウォッチ・​クロノグラフ〝トップガン・ミラマー〟は、こうした過酷な冒険に本当に耐えられるのだろうか。答えはイエスである。セラミックスという素材の恩恵によりケースは傷に強く、クロノグラフのプッシュボタンは堅牢なガイドで保護されている。また、リュウズはねじ込み式なので埃や細かい砂がケース内に入り込む心配もない。表面が織物のように型押しされたカーフスキンストラップも頑丈で、ステッチや接着も丁寧に施されている。ストラップの端部を飾るのは頑強なIWC製フォールディングバックルである。バックルはしっかりと閉まり、不用意に開いてしまうことはない。〝トップガン・ミラマー〟の堅牢な設計を完成させたのは、サファイアクリスタル製の風防とチタン製のねじ込み式裏蓋である。

 ただし、パイロット・​ウォッチ・​クロノグラフ〝トップガン・ミラマー〟を身に着けたまま、ラリーレイドの後にオアシスで水浴したり、アフリカのステップ地帯で河を渡ったりすることは避けた方が賢明である。防水性が特に高い時計ではないからだ。IWCは、理論上、水深60mの水圧に相当する6気圧防水を保証しているが、これはあくまでも、周囲に動きがまったくない状態での圧力、つまり静的圧力を前提とした防水性能であり、水中で動きを伴う場合を想定したものではない。飢えた野生のワニと格闘することはおろか、水中で腕を素早く動かすだけで、プッシュボタンのガイドを通してケース内に湿気が浸入する可能性がある。〝トップガン・ミラマー〟は砂や埃には強いが、水には弱いのだ。