どんな深度でも乾燥を維持
湿気は、深い水中だけではなく、陸上でも時計内部に浸入する。しかも、湿気が入り込む頻度は実際、水中よりも陸上の方が高いのだ。大気中の湿気が時計内に浸入し、これが風防の内側に結露すると、視認性に悪影響を及ぼす。さらに、湿気はムーブメント内のオイルも劣化させるため、部品が早期に磨耗し、精度の悪化につながる恐れがある。
こうした湿気への対策として、ジンは独自のドライ・テクノロジーを開発した。ジンのドライ・テクノロジーにはさまざまな技術が結集されている。まず挙げられるのは、耐ブリスター性に優れたバイトン製EDRパッキンである。緑色のEDRパッキンは、T1.Bの防水性能における重要な要素で、通常使用されるニトリルゴム製の黒いパッキンに比べて耐久性が高く、時計内部への水分の浸透を最小で25%まで抑えることができ、多くの薬品に対しても耐性がある。第2に、ケース内部に充填されたプロテクトガスが乾燥した環境を約束する。それでもなお、わずかながらも水分が浸入することがあれば、硫酸銅を充填したドライカプセルがこれを吸収してくれる。ドライカプセルに吸収された水分量が増すと、白かった硫酸銅が青に変化する。文字盤の6時位置にはドライカプセルの点検窓があり、ここでドライカプセルの水分量を知ることができる。これまでの経験から、ドライカプセルが飽和状態になるまでには数年かかることが分かっている。そのため、ドライカプセルの交換は通常のメンテナンス時で十分である。
光あれ
先般も述べたように、この時計は文字盤と針のコントラストが明確なことから、視認性が良好である。海中では、水深20mでもかなり暗くなるが、T1.Bは発光が強いので暗所でも心配ない。潜水に関する機能は色で識別される。ダイバーベゼルに配された三角形のマーカーと分針は黄色く発光し、潜水時間を素早く確認するのに役立つ。水中で時計が動いていることを確認できるように、秒針にも黄色い蓄光塗料が塗布されている。これらとは対照的に、時針とインデックスは青く発光する。分針は先端がアロー形になっているので、日中も時針と確実に区別することができ、両者を読み違えることはない。
手の甲に当たりづらい位置に設計されたリュウズがうれしいのはダイバーだけではないだろう。リュウズは4時位置に配され、ラグがリュウズガードの役割を果たす。ただ、位置関係から、リュウズを回して緩めるのがやや困難なのは否めない。だが、いったん緩めれば、リュウズは快適に操作することができる。
大きなバックルには押し心地の軽いセーフティーボタンが装備されており、簡単に開くことができる。内蔵されたエクステンションは、バックルを開いた状態で引き出す。残念ながら、今回のテストウォッチのバックルは、裏側の角に鋭い箇所があった。とはいえ、時計を外す時に初めて気付いた程度のレベルであったが。時計自体がとても軽く、薄いケース、そして、表面の滑らかなシリコン製ストラップの恩恵により、T1.Bは着用感が快適である。