【82点】パネライ/ルミノール マリーナ エイトデイズ アッチャイオ-44mm

2015.02.03

香箱はふたつ、テンプ受けは高さを持たせ、そして、テンプはフリースプラング(左はブリッジを外した状態)。さまざまなものを排除した文字盤とは対照的に、その下では多くの手間と工夫がマニュファクチュールムーブメントに加えられている。

日を追うごとに分かる

実力新型キャリバーP.5000の特筆すべき点は、ふたつ隣り合わせに置かれてつながっている香箱だ。これはパワーリザーブが長いだけではなく、精度の安定化の役割も果たしている。香箱に接している輪列の歯車が回っている間、接していない側の香箱の中の主ゼンマイは張りつめた状態が続き、理論上、一定の間はエネルギーの消耗がコンスタントに進むようになっているのだ。
この理論は、歩度測定機でも確認できた。計測の前半では振り角は緩めで、日差は開き気味だった。 前半と言っても、4日目ではなく5日目にデータを取ったのは、8日巻きとは言うものの、実際には約10日は動くからだ。今回のテストは3回行ったが、そのうちの2回は9日と約17時間で時計は停止し、残りの1回は10日と11時間まで動いた。
パネライがパワーリザーブを8日としたのは、なるべく安定した走行ができる日数を提示するためなのだろう。その機能は今回のテストで模範的に示された。歩度測定機に掛けた結果、12時間後の平均日差は完璧にもプラス1秒、各姿勢の値は2日後、3日後、4日後でも同じという、驚くべき正確さを見せていたのだ(ただし、最大姿勢差が8秒と大きかったので、精度安定性の評価は10ポイント満点中、7ポイントとした)。
すでに予想していた通り、5日後に振り角は特記すべき値にまで落ちたが、平均日差はプラス2・8秒にとどまった(精度安定試験欄参照)。7日後の平均日差はプラス4・5秒と、やはり小さい数値に収まっている。もっとも、振り角は垂直姿勢でぎりぎり200度を超えるところまで落ちてしまった。
着用テストでは、文字盤のインデックスの間隔が広い中での目視ではあるが、8日後におよそ1分の進みが見られた。そこから計算すると、夜中は毎日〝文字盤上〟の状態がキープされた条件で、1日あたり平均8秒ほどの進みがあったことが分かる。〝文字盤上〟は、歩度測定機でも一番数値が大きく出たポジションだ。

あえて8日としたのはなぜか

総括すると、このムーブメントは謳われているだけのパワーリザーブと完璧に合致する。8日後の振り角落ちは目立つものだったが、うれしいことにまだまだ動き続けた。パネライが10日巻きと打ち出さなかったのを不思議に思ってもいいくらいだろう。しかし、今回のテストでの走行持続は、あくまでも一例に過ぎないことは認識すべきだ。
しかし、ここで締めくくるにはまだ早い。ほかに言及すべき点はもうないだろうか? 最後に付け加えたいのは史実だ。8日巻きはパネライでは歴史的な栄光をもって展開されてきた。1950年代初期に登場した最初のルミノールモデルは、すでに同じだけの走行持続力を見せていたのだ。だが、当時の中身はアンジェリュスのキャリバー240。手巻きとしては、パワーリザーブインジケーター付きという以外は、特に珍しいものではない。
シンプルという表現における質の良さ、そしてカルト的なポテンシャル。これこそが、パネライの8日巻きの伝統的な魅力なのだ。