水深10mまでは正確な判読が可能
深度表示目盛りの特徴は、表示値が指数関数的に上昇することである。つまり、水深10mまでは正確な水深を知ることができ、10mから16mまでは1m単位で水深を判読することができる。水深が30mを超えると、10m単位での読み取りとなる。あまり深くない水中では有益な表示機能だが、水深が深くなればもちろんデメリットとなる。ただ、スポーツとしてダイビングを楽しむ場合は、いずれにしても30m以上は潜水すべきでないとされているし、アクイス デプスゲージは水深30mまでなら十分正確な深度を表示してくれる。針で表示するタイプの水深計を搭載した時計に比べてもうひとつメリットと言えるのは、慣性を利用した表示メカニズムではないことである。アクイス デプスゲージの水深計は構造上、摩擦がまったく発生しないことから、水中におけるいかなる垂直の動きにも敏感に反応する。これは、テストダイバーも称賛した点である。針で表示するタイプでは多くの場合、水深に大きな変化がないと表示針が反応しない。表示針を採用した機構では構造上、摩擦が発生することから、針が動き出すために比較的大きなエネルギーを必要とするためである。
水深計の測定精度について、実地テストでは驚くほど良い結果を得ることができた。ダイブコンピューターが24・7mと表示した場所で、オリスの水深計は約25mと表示した。その差はわずか1・2%である。オリスによると、ダイブコンピューターとの差は1%未満とされている。ダイブコンピューターでは、温度補正機能を持ち、ピエゾ効果(圧電効果)を利用した圧電センサーによって測定が行われる。海水の塩分濃度と同様、温度も測定精度に影響を及ぼすファクターだが、塩分濃度による影響はそれほど大きくない。オリスの水深計では、地中海の塩分濃度を基準に目盛りが設定されている。だが、ボイル式の水深計の場合は、その特殊な構造により、むしろ温度による影響のほうが懸念される。晴天下で気温40℃、水温20℃の環境では、海に入ることで時計が冷え、その結果、気体の体積が約5%縮小するからだ。より正確な測定結果を求めるなら、ダイビングの規則で指示されているように、潜降する前に時計を着用したまま一定の時間、水中に滞在し、時計が冷えるのを待てば、気体の温度差を最小限に抑えることができるだろう。
ダイブコンピューターをアクイス デプスゲージで代替することは不可能であり、本来の目的ではない。だが、緊急対策用に水深計をもうひとつ携行するのは、賢明と言えるのではないだろうか。緊急事態が発生した場合でもアクイス デプスゲージがあれば、水深5mでのセーフティストップ(訳注:潜水深度5mまで浮上して3~5分間とどまり、体内に溜まった窒素を放出する安全停止)だけは確実に実施することができる。通常3分間のセーフティストップを行う際は、扱いやすい回転ベゼルが停止時間を計測するのに役に立つ。