【88点】A.ランゲ&ゾーネ/グランド・ランゲ1

2013.10.03

専用ムーブメントを搭載し、リニューアルされたグランド・ランゲ1。旧デザインに見られた妥協点は消え、のびのびとした表情となった。

このリニューアルモデルは文字盤の計算された美観もさることながら、何と言っても作り込みのクォリティの高さが全体的に際立っている。几帳面に磨き上げられ、まばゆいばかりの光沢を放つケースとラグ、表から見えない部分的までしっかり研磨されたバックルとツク棒の仕上がりは完璧。また、立体感を持たせたロジウムやゴールドの艶やかな針、繊細にプリントされ、菱形のゴールドインデックスを載せたシルバーの文字盤からも、作業技術の高さがうかがえる。そして、A.ランゲ&ゾーネの一番の見どころは、手仕上げで装飾が施されたムーブメントだ。ルーペでじっくり鑑賞すると、凝りに凝ったディテールは優美の極みであることを実感できる。目を引き付けるのは、ジャーマンシルバー製4分の3プレートの温かみのある色調や、青いネジとゴールドのシャトンに支えられた深紅のルビーの彩りの妙味、スワンネック緩急針が描く曲線や、その下に置かれたテンプ受けのエングレービングだ。A.ランゲ&ゾーネのエングレービングはひとつひとつ手彫りされているため、まったく同じものは存在しないのだが、彫り師の作風には個性の違いがあり、それぞれのニュアンスが異なるのも味わい深い。

微調整用のネジを4つ含むチラネジ付きのテンワは、若干小さな印象を受けるがクラシックな雰囲気が漂う。プレートやブリッジ類はエッジが面取りされ、そのわずかな面積さえも鏡面に磨き上げられているが、その手間はガンギ車受けと新設された4番車受けのふたつのブリッジも同様だ。4分の3プレートを分割してテンプの左隣に独立させ、目を引くように置かれているあたり、造形的にも魅了するムーブメントの開発に努力したことがうかがえる。これは大きな面積を占める4分の3プレートの中の浮島のように嵌め込まれたふたつのブリッジのように、A.ランゲ&ゾーネらしい小技であろう。もっとも、全体的にブリッジが分割され、輪列が覆われずに麗しく露出しているに越したことはないのだが、総合すると、やはりビジュアル面にもこだわったムーブメントと言える。