クォリティは高く、価格はリーズナブル。
飛びつきたくなる獲物が到来した。
しかし、これらのデザインの各構成要素がすべて揃った全体像を考えると、総合的には必ずしも穏やかに調和しているとは思えない。シンプルな文字盤に対して、がっちりと立体感あふれるケースサイドを組み合わせるのは、大胆すぎるように思えるのだ。
もっと手を入れていけば、無理のないデザインにはなっていくはずだ。それは文字盤とケースサイドの処理の組み合わせだけに限らず、ブレスレットについても言える。整いは良く、頑丈ではあるのだが、より良くなる余地はまだ十分あるだろう。
ケース回りに関しては、何よりもリュウズのレベルアップを願いたい。このリュウズは、出し入れに力が必要で非常に堅い。また、ダブルフォールディングバックルも、かなりしっかりした質量感のある作りだ。だが、よく見かけるフォールディングバックルとは異なり、バックルの中心にあるバーは、部分的にしかフライスされていない。そのため、プッシュボタンが肌に触れず、腕の毛も引き込まれにくい作りになっている。ただ、バックルを見て、ここがもっと良ければ、と惜しい気持ちになるのは、内側の平滑面の様子からして仕上げにあまり力を入れて作業をしたようには感じないことだ。些細なことかもしれないが、やはり気になってしまうものだ。
ブレスレットは、調整用のコマの側面にあるネジが、はっきりと目につく。この箇所をネジ留めするのは、高額モデルには必須項目というわけではない。ちなみにオメガのクラシカルなムーンウォッチの、スピードマスター プロフェッショナルは、コーアクシャル脱進機搭載仕様ではないものでも、ブレスレットの側面にはネジを入れず、細いバーを通してつないでいる。
さて、腕時計は視認性が高ければ、ほぼそれだけでもすでにラグジュアリーであると言える。というのも、世の腕時計にはロゴマークさえも見づらいようなものもあるからだ。その点については、ラグジュアリー オートマティックは、まずまずといったところ。コントラストがはっきりしないシルバーカラーの文字盤に、鏡面仕上げの針やインデックスを添えているにもかかわらず、読み取りはすこぶる明瞭だ。これは無反射加工のサファイアクリスタル風防と、マットな地に段差を設けてメリハリをつけた文字盤が担うところが大きい。しかし、分・秒を示す目盛りに対して分針が短めなことと、日付表示の小ささには、もう少し何かしら手を加えられるように思う。