目に入るものすべてが極めて入念に装飾されている
ラジオミールの特徴のひとつに、ワイヤーループラグがある。このラグは、ストラップをバネ棒で固定する通常のタイプとは異なる形状を持つため、ストラップを交換するには4本の小さなネジを緩め、U字型のワイヤーループラグを外側に引き出さなければならない。ワイヤーループラグをケースから取り外したら、さらに左右に引っ張って、それぞれのラグをふたつのパーツに分解する。ストラップはこうして外すことができる。ラグを構成するふたつのパーツは、中央部のスリーブでつながっている。ストラップはバッファローレザーで出来ており、バックスキンのように表面の粗い風合いが特徴だ。このストラップは、マットブラックのケースとの相性は抜群である。尾錠もマットブラックで統一されているが、DLCコーティングが施されたチタン製で、ケースと同じように極めて丁寧に加工されている。
時、分、スモールセコンド、デイト表示を備えるラジオミールで特に目を引くのは、6時位置に配された水平スライド式パワーリザーブインジケーターである。デイト表示を除き、パワーリザーブインジケーターも含めたすべての表示要素は暗所でも良好な視認性を発揮する。インデックスとアワーマーカーは発光力が非常に強い。その理由は、蓄光塗料を塗布した下層の盤面と、数字とインデックスがフライス加工でくりぬかれた上層の盤面の二重構造からなる伝統的なサンドイッチダイアルにある。この構造では、夜光処理を施した通常のインデックスや数字に比べ、蓄光塗料を格段に多く盛ることができる。また、盤面をくりぬく技法からは、特徴的なフォルムを持つ伝統的なパネライの数字が生まれることとなり、「6」の数字は必然的に開いたフォルムになっている。分解してみると、多層構造にもかかわらず、文字盤はかなり薄いことに気付く。さらに、文字盤を裏返すと、蓄光塗料を少しでも多く盛れるように、数字とインデックスが上に来る部分の下層盤面に窪みを持たせてあることも観察できる。
次に、ケースバックを外してみる。マットブラックのケースに合わせてムーブメントも少し暗色に見せられるように、グレーに着色したサファイアクリスタルをトランスパレントバックに採用しているのは興味深い。キャリバーP.2002でさらに目立つのは、3つのブリッジによって視界の大部分が覆われている点である。見えるのは、比較的小さなテンプとバランスコック、2番車の一部、そして、2番車の下にある香箱のわずかな部分である。それと引き換えに、ブリッジは美しい線彫りで装飾されている。エッジには面取りとポリッシュ仕上げが施され、ネジ頭にも丁寧にポリッシュがかけられている。目に入るものすべてが極めて入念に装飾されており、ブランドのイメージにふさわしい。ただ、3つのブリッジで塞がれているため、多くを観察できないのは残念である。