あえて“はずして”の登壇
クラシック マニュファクチュールは、ゴールドケースのみが作られているエレガントなモデルだ。ケース直径38mmというサイズは、今日ではすでに主流から外れている。前へ前へと主張しすぎず、一歩退いて登場した格好だ。幅の狭いベゼルと、真っ直ぐ伸びるほっそりしたラグは、1940年代から50年代の腕時計の姿を彷彿とさせる。それでいて、白い文字盤の外周に置かれたローマ数字や、細かな目盛り入りのスモールセコンド、金色のリーフ針は、懐中時計を想わせる佇まいだ。しかし、一部のローマンインデックスの数字の欠け具合と、スモールセコンドの内側に設けられたインナートラックの余白の取り方は、外観のバランス上、目に重たすぎるようにも感じられる。日付表示も、あっさりと縁取りの枠も付けず控えめに3時位置に寄せられているにもかかわらず、今ひとつしっくり来ない。リュウズにはロゴが入れられていないが、これに関してはバランスがどうと言うよりも、好き好きの問題だろう。
斑が綺麗に入った、縁が裁ち切りの手縫いのアリゲーターストラップは、ケース同様にすっきり爽やかな仕上がりだ。作業の丁寧さは、レリーフの入った尾錠にも見て取れる。ツク棒も、凝った形状ではないがフライスは完璧だ。ストラップを尾錠に取り付ける横棒を留めるネジは、両サイドにはみ出さない構造になっている。しかし、難を言うならば、このストラップは若干長すぎだろう。手首回りがかなり豊かな者でなければ、一番内側の穴で留めても緩いはずだ。これでは腕上の据わりが安定せずに動いてしまい、ふと見るとリュウズの位置がずれているということになるだろう。
リュウズは1段引きで日付修正を素早く行える。2段引きで針合わせができるのだが、ストップセコンド仕様になっているので、時報や電波時計を利用すると、秒単位まで正確な時間に合わせられる。
厳密な時間合わせを可能にしているのは、このモデルがまさに精密に動いているからこそだ。我々の着用テストでは、毎日の進みは1秒のみだった。歩度測定機での平均日差はプラス1・3秒/日。これは全姿勢において、水準に大きな開きは見られなかった。もっとも、姿勢差はかなり強く現れた。最大8秒もの開きが出たことが、今回の採点上のネックになっている。それに対して、振り角は安定していたことも報告しておこう。
どうも、このムーブメントは、L.U.Cムーブメントに比べて、最終調整が甘いことが大きな違いではないかと思われる。というのは、このキャリバー01・04︲Cにも寒暖の温度と等時性を考慮した5姿勢調整済みの刻印は入っているのだ。公式クロノメーターの認証を得るために整備されていないのも、そう考えると納得がいく。テンワもL.U.Cムーブメントではより軽量な3本アームのものを使用しているが、このムーブメントでは4本アームのものが使われている。