手作業の特徴が出たディテール
文字盤の素晴らしい出来には及ばないものの、力作なのがケースだ。ケース本体だけでなく、面取りされ、鏡面に磨かれたプッシュボタンや、つまんで引き出しやすいよう、ケースに接する側にわずかな角度が付けられたリュウズなど、全体の設計がしっかりしている。ケース本体はサテン仕上げになっているが、ラグ間の内側は鏡面仕上げである。コントラストがついてはいるが、この点は統一感がないと感じる向きもいるだろう。いずれにせよ、加工しづらい箇所だけに、鏡面仕上げのほうが幾分か作業しやすいのかもしれない。
それに対して、ラグのエッジに丸みを付けるのは簡単にはいかないはずだ。ラグの根元のエッジから先端にかけて角を落としていき、着用時の不快さがないように配慮されている。テストモデルでは、各箇所の仕上げの調子が若干均一さに欠けるように感じたが、それはやはり手作業ゆえだろうか。しかし、ラグジュアリーウォッチには、そういった些細なことも重要な意味を持つことを付け加えておきたい。
プッシュボタンの押し心地は軽やかだが、残念ながら、クロノグラフ計測スタート時に見逃せないほどの針飛びが起きることもあった。反対に、リセット時は完璧な動きを見せる。リセットボタンを押すと、きっちり正確に垂直状態に帰零するのは頼もしい。その上、30分積算計の針はずれることなく、インデックスをピシリと指してくれる。
ヘッド側面に大きく溝を付けられたリュウズは、前述のようにケース本体に接するところに角度が付けられている。ことさら爪を立てずに引き出せ、針合わせにも便利だ。エル・プリメロは、通常のムーブメントとは違ってリュウズを引き出した1段目で針合わせを行い、日付修正は一番外側で行うようになっている。これにはすぐに慣れるだろう。残念なのは、ストップセコンド仕様になっていないことだ。リュウズを引いても9時位置のスモールセコンドが止まらないため、秒単位で正確な時刻に針合わせをすることができない。