【85点】オーデマ ピゲ/ロイヤル オーク 復刻モデル

2012.09.03

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ローレリーフ(訳注:浅浮き彫り)と呼ばれる技術を駆使した文字盤の複雑なモチーフ“プチタペストリー”は、ルーペで見て初めて真の姿を明かす。これぞ微の極みだ。

巧緻を極めた作り

いずれにしても、ロイヤル オークでは数多くの要素が極めて精巧に加工されている。ケースも例外ではなく、サテン仕上げの面と、面取りをしてポリッシュで仕上げた部分の変化が美しい。その上、さまざまな幾何学模様の組み合わせも目を楽しませてくれる。八角形のベゼルには、初代ロイヤル オークから受け継がれているホワイトゴールド製の六角形ビスが配され、ケースとブレスレットの移行部は、横から見ると45度の角度を形成している。ブレスレットはケースとの一体感が完璧だ。復刻モデルでは、ケースとブレスレットの厚さがまったく同じになるように、ケースへの移行部の設計に工夫が凝らされている。

労を惜しまないものづくりの姿勢は、バックルに向かって徐々に細くなるブレスレットにも見て取ることができる。ブレスレットのコマにはひとつとして同じものがなく、さらに、中ゴマもそれぞれのコマに合わせてサイズが異なっている。これらのパーツを製造するには、当然のことながら、相応数の金型を用意しなければならない。ブレスレットの部品はネジで固定されていないことから、動きが非常に滑らかで、なおかつ遊びは極端に小さい。ブレスレットがどのように組み立てられるのかは、一見すると謎である。オーデマ ピゲの写真を見て初めて、中ゴマを留めるためのバネ棒の存在が明らかになる。バネ棒は薄い工具で押し縮められ、コマに接合される。その後、中ゴマが挿入され、バネ棒が正しい位置で保持される。

フォールディングバックルは、内側のパーツが以前は薄いプレートで出来ていたが、新作では削り出し加工されており、仕様もトリプルブレードフォールディングバックルになった。ふたつのセーフティーボタンは、横から見るとブレスレットのコマと同じフォルムを持ち、エッジはきちんと面取りされ、ポリッシュがかけられている。左右対称の美しいバックルは、フライス加工された“AP”のロゴで飾られている。コマとコマが隙間なく設計されたブレスレットと同様に、薄く、裏面の滑らかなバックルも快適な装着感に大きく貢献している。

復刻モデルでありがたいのは、ケースがモノコック構造であるにもかかわらず、オリジナルモデルとは異なり、ケースバックがトランスパレントになっている点である。トランスパレントバックを通して観察できる自動巻きキャリバー2121は、オリジナルモデルに搭載されていたものと同機種である。キャリバー2121は、センターローター搭載ムーブメントの中で最も薄い自動巻きムーブメントに数えられており、今日もさることながら、当時からロイヤル オークの極めて薄い仕上がりに寄与していた。

キャリバー2121は、もとはと言えばジャガー・ルクルトがオーデマ ピゲや他のブランドのために開発したムーブメントである。今日もなお、ヴァシュロン・コンスタンタンがこのムーブメントをキャリバー1120(デイト表示なし)として搭載している。また、パテック フィリップも、ロイヤル オークへのリベンジとして、76年のノーチラスでキャリバー28-255C(デイト表示付き)として採用したのは興味深い。だが、このムーブメントを今も製作し続けているのは、唯一、オーデマ ピゲだけである。
我々は、ケースの構造とムーブメントをより詳細に観察するため、ハンブルクの時計宝飾店、ヴェンペの時計修理工房で、この時計を分解することにした。