【83点】パネライ / ルミノール 1950 スリーデイズ-47MM

2012.07.03

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ケースサイドに入れられた一筋の“エッジ"はこの“ルミノール 1950"ケース最大の特徴。オリジナルモデルを解析し、プロトタイプを何度も修正して再現された精密な形状を持つ。エッジとエッジをケースの角でぴたり と交わらせ、研磨の際にもそれを崩さないのが難しかった点だという。歴史的な意匠を現代の加工技術で再現した造形美のひとつの到達点。また、ケースサイド の6時側にはケースナンバーが刻印される。

簡素は美なり

国に旅に出たり、歴史的なものを見聞きしたりする機会があると、物事の簡素さについて感じ入ることが時折ある。少ない要素で事足らせ、幸福たらしめるというのは一種の才能ではないだろうか。そうした事柄に触れると、日々の細々した悩み事など、よく考えればたいした問題ではないとさえ思える。往々にして、シンプルなものには純然たる美が存在する。それは、例えば木製の櫂や陶器の碗、古い蛇口などからも感じ取ることがで
きる。
パネライもよりシンプルなスタイルへと回帰しはじめた。2011年に登場したPAM00372は、手巻きで日付表示も秒針もない。50年以上前に作られた歴史的なモデルのリバイバルで、簡素であるがゆえの美しさが力みなく伝わってくる。このモデルには、オリジナルのシンプルさと細部にかける愛情が、丁寧に丁寧に再現されているのだ。

ここでパネライの歴史を少し振り返ってみよう。それは19世紀中期、ジョヴァンニ・パネライとイタリア海軍特殊潜水部隊との関係から始まった。1849年、ジェノバに海軍潜水学校が創立され、その11年後にジョヴァンニ・パネライはフィレンツェに時計店を開店する。20世紀に入り、店はめきめきと評判を上げ、第一次世界大戦中にはイタリア海軍にさまざまな機器を納品している。
そして1938年、特殊潜水部隊への時計の納品が始まった。この時の時計はロレックス製ではあったが、文字盤はパネライが自身で開発したラジウム臭素化合物をもとにした夜光塗料付きの高い視認性を確保するものが取り付けられていた。

直径47mmのクッションケースの形は、今日のラジオミールの原型になっている。3時、6時、9時、12時に夜光の数字を置いた現在のパネライに典型的な文字盤(秒針なし)スタイルも、この時期にすでに確立されていたものだ。そして、時は進んで50年代初頭、ロレックスはパネライに優れた防水性の頑強なケースを納品する。ラグはハンダ付けではなくケースと一体化した作りとなった。さらに、55年からパネライはケースを修正。かの有名なリュウズガードが登場し、防水性も向上した。文字盤も変更され、夜光塗料は放射性物質のより少ないトリチウムを使用したものになった。文字盤を重ねたサンドイッチ構造が採り入れられたのもこの頃だ。夜光塗料を塗った文字盤の上に、アラビア数字とバーインデックスをくり抜いた文字盤を重ねる方式になった。