【83点】オーデマ ピゲ/ロイヤル オーク オフショア ダイバー

2012.03.03

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堅牢なケースは湿気から磁気まで確実にシャットアウト。その中に、美しく、設計の秀逸な自動巻きキャリバー3120が収まる。

陸上でのメリット

これまで述べたように、オフショア ダイバーは潜水に適した時計である。だが、これほど美しく、高級で高額な時計を、潜水装備でこすって傷付けたり、水中から甲板に上がる時にぶつけたりしたいユーザーが実際にいるだろうか。どちらかと言うと、オフショア ダイバーは船上で午後のカクテルを楽しむ時や、港の高級レストランへディナーに出かける際に身に着けたい時計ではないだろうか。ラバーストラップを備えたスポーツウォッチであっても、ロイヤル オークはそのスタイリッシュな外観を損なわないため、オフショア ダイバーにはむしろ、こうしたシーンがふさわしい。スタイリッシュな外観には、“メガ タペストリー"と呼ばれるロイヤル オーク オフショア独自の格子パターンを備えた加工の完璧な文字盤が寄与している。今回の文字盤では、オレンジカラーの分針など、カラフルな要素は意図的に排されており、その代わり、時針と分針にはホワイトゴールドが使用されている。

一方で、オフショア ダイバーの持つ特別な魅力には、極めてファセット豊かな非の打ち所のない作り込みのケースも大きく貢献している。八角形のベゼルに取り付けられた六角形のステンレススチール製のビスや、サテンとポリッシュの美しいコンビ仕上げの面は、ロイヤル オークの他のモデルでも知られている要素である。ベゼルの下に挿入されたブラックラバー製の防水ガスケットは、すべてのオフショアモデルと同様に極めて厚く、オフショア ダイバーではさらに、ふたつのリュウズにラバークラッドが取り付けられている。同じく手の込んだ作りのケースバックは、トランスパレントバックではなく、粒状の模様彫りが施されたクローズドバックである。中央部には“Royal Oak OffShore"と浮き彫りされ、文字の表面にはポリッシュがかけられている。特にこだわりを感じるディテールは、ラグの上面と側面の境目だ。時計本体に向かって細くなった面にはポリッシュ仕上げが施されている。また、リュウズガードの面取りも、それ以上に繊細な仕上がりである。そもそも、オフショア ダイバーのケースは世界で最も優れたケースのひとつに数えられるのだが、そのエッジの効いた設計が故に、ワイシャツやセーターを着る場合には、長い袖の下に押し込まなければならないのが難点である。というわけで、オフショア ダイバーは、イブニングシーンで着用する際にも、やはり暖かい場所がふさわしいということになる。

ラグにはふたつの可動部があり、表と裏に入念なサテン仕上げが施されている。ストラップは、これらの可動部の恩恵により、ケースと継ぎ目なくつながっている。ストラップはシンプルなデザインながらも、しっかりとした作りと、表面に施された粒状の模様が説得力を与えている。粒状の模様には、ストラップの表側を埃から守り、裏側では汗の発生を抑える効果がある。ピンバックルの出来映えは素晴らしく、サイズが大きいことからストラップやケースとの相性も完璧で、堅牢なツク棒は幅の広い穴にしっかりと留まる。すべての部品が頑丈に設計されていることには、たったひとつだがデメリットがある。大きく、重たいスポーツウォッチは、控えめなタイムピースよりも必然的に着用時の快適さがやや劣ってしまう点である。
装着感に比べ、メインのリュウズの操作はずっと快適である。大きなリュウズは、特にラバークラッドの恩恵により緩めるのが簡単で、希望するポジションに引き出して、そこで回すことができる。巻き上げも、一段引き出したポジションで行う日付合わせと同様にスムーズである。リュウズを完全に引き出した状態で時刻合わせを行う際は、針の遊びがやや大きすぎる感があるものの、分針を合わせる時に、合わせたい時刻よりも少し先に進めてから希望する分まで戻すという、時刻合わせの基本的な約束事を必ず遵守すれば、深刻な事態に陥ることはない。

文字盤外周とインナーベゼルに備えられたインデックスが多いことや、夜光塗料が3分割された時針に加え、文字盤の構成がいささか込み入っているため、時計を見た時に一瞬、混乱を来す感が否めないとは言え、視認性は総じて良好である。暗所では、互いに主張し合う要素が少し静まるので、文字盤を明確に認識できるようになり、水中や夜間の船室内では潜水時間や時刻を簡単に読み取ることができる。