【82点】カール F. ブヘラ / パトラビ エボテック デイデイト

2011.01.29

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ペリフェラルローターは、定位置にとどまっている時間が長い。
ローターを動かしはじめるには、ある程度大きな動きを与えなければならない。

ペリフェラルローターはDLCコーティングが施された3個のローラーで支えられており、これをさらにボールベアリングが支持する仕組みになっている。テンプの上部には、カール F. ブヘラ独自の緩急調整機構であるセントラル・デュアル・アジャスティング・システム(CDAS)が備えられる。緩急を調整した後、ネジでしっかりと固定することによって、大きな衝撃が加わっても緩急針と可動式のヒゲ持ちが飛ばない新システムを採用。

動作が鍵を握る自社製キャリバーのパフォーマンス

ヘラグループは、2001年に新しく立ち上げた時計ブランド、カール F.ブヘラを一歩一歩着実に築き上げてきた。このブランドが自社製キャリバーを開発するという決断を下したのは05年のことである。時計ブランドがマニュファクチュールキャリバーを開発するには、基本的にいくつかの方法がある。ひとつは、1社あるいは複数のエボーシュメーカーにブランド専用キャリバーの開発、製造を依頼する方法である。ただし、この方法には、必要なノウハウの大部分がエボーシュメーカーのものになってしまうというデメリットがある。もうひとつは、最初から最後まで、すべてを自社で行う方法だ。だが、これには多くの時間とコストがかかり、牛歩に似た困難な開発過程を克服しなければならないのが常である。このほか、エボーシュメーカーを買収するのもひとつの方法だろう。

開発の条件は”進歩的な設計のキャリバー”

カール F.ブヘラの開発チームには当初から、第1号となるマニュファクチュールキャリバーが他社のどのキャリバーをも凌駕する存在でなければならないという条件が課せられていた。このことは、技術仕様書に極めて詳細に定義されている。「古典的な調速機構やスイス式レバー脱進機、受け石を使用した輪列など、伝統的であるが故に信頼性の高い技術を採用すること。ブリッジやその他の部品を十分に鑑賞できる進歩的な設計のキャリバーであること。付加機能を追加できるようなプラットフォーム的機能を有するムーブメントであること。信頼性が極めて高く、ベースムーブメントとして半工業的な製造が可能であること」。今日すでに経営陣から退いている前CEOのトーマス・モルフ氏は、これらの条件を実現するための土台を作り上げた。

その一環としてモルフ氏は、カール F.ブヘラに長年にわたり協力してきたTHA社(Techniques Horlogères Appliquées SA)をブヘラ モントルSAに吸収合併した。サントコアに本拠を置き、複雑機構などを製造していたTHA社の合併は07年7月1日に行われた。THA社は合併後、直ちに改称され、カール F.ブヘラ テクノロジーSA(CFBT=Carl F. Bucherer Technologies SA)となる。こうして、プロジェクトは遅れることなくスタートさせることができた。当時、トーマス・モルフ氏は自身の戦略について次のように語ってくれた。

「私たちは、パートナーと共同でカール F.ブヘラ専用に開発、製作したモジュールも含め、これまで実績のあるベースムーブメントを使用する一方で、カール F.ブヘラのコレクションの頂点を飾るために、自社製キャリバーや複雑機構を設計、製造することにしたのです」
当時は未来の音楽のように聞こえたこの計画が今日では現実のものとなり、マニュファクチュールキャリバーを搭載した1号機が09年、市場に送り出された。今回のテストウォッチである「パトラビ エボテック デイデイト」の内部ではCFB A1001という名のキャリバーが時を刻む。ペリフェラルローター、スモールセコンド、曜日表示、ビッグデイト表示機構を搭載した自動巻きキャリバーである。そればかりか、今年のバーゼルワールドではすでに第2世代も発表された。パワーリザーブインジケーターを追加装備したキャリバーCFB A1002である。技術仕様書に記載されたスイス式レバー脱進機や古典的なテンプ、受け石を使用した伝統的な輪列による「信頼性の高い技術」は、比較的簡単に実現できたようだ。これは、ムーブメントを見れば一目瞭然である。各部品のポジション、別の言い方をすれば、輪列や脱進機など可動部品の回転軸を見ると、CFBT社が信頼性の高い機構を採用したことがよく分かる。名高いETAプゾー7001との類似性は否定できない点だが、これについてはカール F.ブヘラの技術担当副社長、アルブレヒト・ハーケ博士も間接的ではあるものの我々の指摘に同意した。