STRANDGUT
浜辺に漂着したような......
2009年、パネライは自社製ムーブメントの第2のラインを発表した。P.9000系キャリバーである。
パワーリザーブが8日間から3日間に短くなったP.9000系キャリバーは、自動巻き機構を搭載し、価格もP.2000シリーズに比べて大幅に抑えられている。P.2000系で自動巻きモデルのキャリバーP.2003は、10日間のパワーリザーブを備えているが、これを搭載した時計は161万7000円と、今回のテストウォッチであるルミノール 1950 3デイズ GMTの倍近い価格である。
3デイズ GMTはそれでもなお、第2タイムゾーン表示機能(12時間針用の昼夜表示は非装備)やパワーリザーブインジケーター(ケースバック側にあり、水平スライド式ではない)など、10デイズが備えていたスペックをほぼすべて搭載している。また、リュウズを時刻合わせのポジションに引き出すと秒針が戻る、ゼロリセットセコンド機構も備えている。
今回のテストウォッチに搭載されたキャリバーP.9001以外に、P.9000シリーズには第2タイムゾーンやパワーリザーブインジケーターを載せていないモデルもあり、キャリバーP.9002ではパワーリザーブインジケーターが文字盤側に搭載されている。 今回のテストウォッチでも、イタリア生まれのスイスブランドが生み出すモデルのすべてに共通するアイデンティティを直ちに認識することができる。ポリッシュ仕上げのベゼルを備えたサテン仕上げのクッション型ケース、リュウズをケースに押し込むレバーロック機構の付いたリュウズプロテクター、そしてアラビア数字とアワーマーカーを組み合わせた文字盤構成は、パネライ独自の様式だ。1950年製のルミノールのモデルまで遡るこのデザインの主題は、見事な解釈が加えられつつ、今回のテストモデルにも受け継がれている。しかし、パネライの他のモデルとあまり違いがないと言えば、それも事実である。プロダクトラインが著しく相似していることは、ブランドの強みであると同時に弱点にもなってしまう。このデザインを好まない時計愛好家にとっては、同一ブランドで選べるモデルがないのはやはり短所となる。強みはやはり、どのモデルもひと目でパネライと分かる点である。また、デザインがレトロであるが故に、時代が変わっても古びて見えないのも長所と言えよう。ルミノール 3デイズは、10年経っても決して時代遅れにはならないのだ。これは、市場で発表される最新モデルのすべてに当てはまることではない。
3デイズ GMTは、パネライの多くのモデルと異なるディテールをいくつか備えている。日付ディスクの文字は完全な白ではなく、ベージュがかったオフホワイトである。また、3デイズでは嬉しいことに、パネライの日付に時折装備されている円形の拡大レンズが省略されている。多彩な機能にもかかわらず、文字盤はいたってシンプルな構成だ。GMT針はローカルタイムを表示する時針の下に隠れており、パワーリザーブインジケーターは裏蓋側のムーブメントに取り付けられている。P.2000シリーズではドーム型に盛り上がった風防がよく見られるが、3デイズではわずかにせり出す程度になったのも好印象である。