ポロ・ジェネレーション
時が経つのは早いものである。1979年当時、ドイツで最も好まれたヒット曲と言えば、Mの"ポップムジーク(Pop Muzik)"やペーター・マファイの"ソー・アー・ユー(So bist Du)"、またパトリック・エルナンデスの"ボーン・トゥー・ビー・アライブ(Born to be alive)"などが挙げられる。同年のサッカー・ブンデスリーガ1部では、VFBシュトゥットガルトと1.FCカイザースラウテルンを抑えたハンブルガーSVが勝者となる。富裕層がテニスやゴルフ、ポロのようなスポーツを満喫していた時代だ。今日ではテニスやゴルフは大衆スポーツとなっているが、ポロだけは唯一、限られた層のスポーツという地位を堅持している。2000年以上前にペルシアで発祥したこの団体競技は、現代に至るまで、限られた人々の間でしか行われてこなかった。ポロの現役選手は皆、高額で世話に大変な手間がかかるポロ用のポニーを少なくとも2頭は所有していなければ、トーナメントへの参加が許されない。このことが、ポロというスポーツが特定の社会層に限定されてきた主な理由なのだろう。現在、ドイツ・ポロ連盟には27のクラブと約300名の現役選手が登録されている。スイスにも少数のクラブがあり、オーストリアでは、ウィーンの近くのエプライスヒドルフやクラーゲンフルト近郊のディーンストル・グートなどに、クラブが集中している。1979年といえば、ピアジェがポロ・コレクションをリリースした年でもある。ポロ・コレクションの時計には、贅沢さと特異性を兼ね備えたポロというスポーツの性格が反映されていた。優れた高級スポーツウォッチにはマーケットが存在することを証明したのは、オーデマ ピゲが72年に発表したロイヤルオークである。パテック フィリップもまた、76年にノーチラスをリリースすることで、同セグメントの重鎮が他にもいることを主張した。79年以来、ポロはこの類型学的グループにおいて第3の重要な代表者を務めており、数多くのバリエーションを生み出している。
ポロのファーストモデルがリリースされてから30年経った2009年、ピアジェは若々しくリニューアルした「ピアジェ ポロ FORTYFIVE」をプログラムのラインナップに加えた。45mmというケース径を与えられた新世代ポロは、ビッグサイズを追う今日のトレンドにもきちんと対応している。直径が32~35mmだったファーストモデルに比べると、革命的な飛躍だ。もちろん、ドーフィンハンドや4時、8時、12時位置のアラビックインデックス、ケースに水平にデザインされたリブなど、ポロ特有のディテールは健在である。
しかも、これらのディテールはさらに進化している。中でも重要な要素を挙げてみよう。分針は長くなって5分ごとに置かれたインデックスまで届き、視認性が格段に良くなった。ねじ込み式リュウズにはめ込まれたラバーパーツは、スポーティな性格を強調するばかりか、グリップ性が向上したことからリュウズの巻き上げも容易になった。さらに、ケースのベースマテリアルも新しくなり、ポロのラインでは今回初めて、チタニウムが採用されている。軽い上に、堅牢でアレルギーを起こしにくいチタニウムは、スポーツウォッチにふさわしい素材である。ケース上に水平に配されたステンレススティールのリブは、チタニウムのベースとほとんど境目がなく、一体化している。スティールとチタニウムのコンビは、ポロのモデルではこれまでなかったものである。批判的精神をもって観察したとしても、ケースには欠点がまったく見つからない。5ピースから成るケースは極めて手の込んだ構造で、感銘を受けるほどの精密さだ。角はエッジが立っているが、尖っているわけではなく、着用時には肌に優しい。5つのパーツの接合部はさらに、全体の造形美にも貢献している。
ラバーストラップはスポーツウォッチにとって、チタニウムやステンレススティールと並ぶ理想的な選択肢である。ポロのストラップを起草したピアジェのエンジニアたちは、ケースからストラップへと流れるポロ特有のラインに新しいニュアンスを加えることに成功した。射出成形のラバーストラップには、上下に2本ずつ、ステンレススティールの小さなパーツが挿入されている。これは、象眼細工を想起させるケースを踏襲したデザインで、4本のスティールエレメントのうち、ケースに近い方のふたつのパーツは、ラグとして機能している。弾力性のあるエレメントの恩恵により、ストラップとケースは硬く固定されず、連結は極めてフレキシブルだ。スティールエレメントは同時に、ストラップの耐久性にも貢献している。ストラップを裏返すと、スティールエレメントがネジでラバーに固定されているのが見える。こうしたディテールからも、"長い耐久性"というキーワードが技術者たちの仕様書のトップに記載されていたことを窺い知ることができる。
この時計の魅力は、なんといっても調和の取れたプロポーションだろう。大きな文字盤はゆったりと設計され、視認性は暗所でも抜群である。それでいてなお、デザイナーたちは、幅の広いベゼルのためのスペースもケースに確保している。湾曲したフォルムの恩恵により、ケースは手首への馴染みが良く、一瞬たりとも頭でっかちに見えることはない。ここにも、ステンレススティール製のトリプルフォールディングバックルに対するチタニウムケースの優位性が表れている。45mmという直径や大型バックルにもかかわらず、重さは110グラムに過ぎないのだ。