量産機ならではのスタイル
ケースを裏返してみると、昔も今もソリッドバックであることが分かる。せっかくのメカを閉じ込めて、面会謝絶にされているのは残念だ。このモデルのベースムーブメントには、〝エラボレ〟と呼ばれる装飾の簡素な種類を使用しているのだが、タグ・ホイヤーはブリッジやローターに数種類の装飾研磨を入れることも省いてはいない。ローターに刻印された黒い文字は、スポーティーな風貌によく合っている。
搭載キャリバーのETA2894は、3針キャリバーのETA2892を基にクロノグラフモジュールを積んだものだ。そのため、リュウズはケース側面の若干下寄りに設置され、つまみやすい大きさになっているものの、その分クロノグラフのプッシャーを押すときにはやや不便でもある。そして何よりもスタート/ストップボタンの反応に鈍さを感じてしまった。一時停止時やリセット時はそれよりはまだ反応が良かったが、プッシャーは総じて動きが重い。このムーブメントのクロノグラフはコラムホイールを使っているが、量産機らしくあくまで簡易式だ。またリセットハンマーを生産性の高い、太くて厚い形状にしたためか、今回使用したテスト用モデルでは、リセット時にカムとレバーが引っかかるような感触が時々手に伝わった。
さて、精度はどうだろうか。編集部での歩度チェックでは、おおむね良好といったところだった。もっとも、歩度測定機に掛けたところ、〝文字盤下〟のポジションでは、明らかに数値が大きすぎる結果が出ている。しかし喜ばしいのは、平常時の平均日差がプラス4・5秒、クロノグラフ作動時はむしろそれより小さくプラス2・5秒とわずかだったことだ。そして着用テストでは、姿勢差はゼロからプラス6秒の間に収まっている。
バランスが良いデザイン
スポーティーにまとめたケースや、ダッシュボードの計器のような文字盤表示と相まって、パンチングカーフのレザーストラップもクルマを想起させるデザインで、よく合っている。ストラップには機能的かつ加工の良いプッシュボタン開閉式のチタン製フォールディングバックルが付いていて、これもケースと同じくチタンカーバイドコーティング加工のものだ。バックルはクリップ構造のため、ストラップを挟んで固定するので、段階式とは異なり長さはジャストサイズに調節できる。
これらすべてを見て思うのは、要するにモンツァ クロノグラフは、70年代の初代モンツァよりさらにシックで強く、望ましきものになっているということだ。優れたものは、時代の変化とともにより良く進化し続ける。その好例と言えるだろう。