【78点】カール F. ブヘラ/マネロ フライバック

2019.07.27

 2018年、カール F.ブヘラからマネロフライバックのバリエーションモデルが複数登場した。その内容は、文字盤がシルバーカラーのものやゴールドカラーのものをはじめ、ブラックやブルーグレーもそろっている。そしてケース素材はステンレススティールもしくは18Kローズゴールドと、ラインナップは多彩だ。

 これまでの同社のモデルでは、クロノグラフはどのタイプも文字盤は単色使いでストラップはアリゲーター製という共通項があったのだが、これらのバリエーションではそうした従来のデザインコードが打ち破られた。もともとクロノグラフは形状そのものがすでに人目を引く存在ではあるが、デザインを工夫することで、アイキャッチとして見事に仕立て上げられているのが分かる。今回テストに取り上げる黒い文字盤のモデルは、メインエリアに赤い差し色を加え、サブダイアルとのコントラストや、穴開きのクーズー革製ストラップが一層スポーティー感を高めており、さらにレトロなタッチにはそそられるものがある。このデザインの変更は、実際に目で見て手に取ってから、なるほどと唸るほどに実感した。今までのマネロも気に入ってはいたが、今回のバリエーションはぐっと引き込まれるほど魅力的だ。

マネロ フライバック

高水準のクォリティ

 ボンベ状の文字盤にはアプライドインデックスが置かれ、一段低くなっているサブダイアルもすんなりとなじんでいる。タキメーターの目盛りが文字盤全体を引き締め、穴開きのレザーストラップからも、モータースポーツ由来のデザインらしさが引き立つ。タキメーターは平均速度の計測に使える機能だ。車などの乗り物が一定区間を走行するときクロノグラフをスタートさせ、1㎞または1マイル走ったところでストップさせる。その時、クロノグラフ針が示すタキメーターの目盛りの箇所が、計測していた区間の時速を表している。

 このレトロな外観のマネロ フライバックを腕に巻いてみると、マッシュルーム型のプッシュボタンとはっきり丸みを帯びたボンベ型風防がより際立つことに気付く。ここでストラップについても説明しよう。このストラップは、アフリカに棲息するウシ科ブッシュバック属の偶蹄目であるクーズーという灰茶色の動物の革製だ。見かけはちょっと風変わりな感じだが、しなやかで、ふたつのプッシュピース付きの両折りフォールディングバックルとともに、シックで非常に丁寧に仕上がっている。細かいことを言えば、テストモデルはストラップの裏側の糸が若干ほつれ気味だったのが残念だった。

 しかし、全体的に加工は欠点なしと言っていいほどの出来栄えだ。ケースはまさにきっちり仕上がっていて、文字盤やバックルについても同様に完成度は高い。腕時計クロノグラフの往年の興隆期を彷彿とさせるサファイアクリスタル製風防のドーム形状に、手の込んだ鏡面研磨。ラグをサテンに仕上げてメリハリを付けているところもいい具合だ。しかし裏蓋がトランスパレントとはいえ、ねじ込み式で、ケース全体がこれだけ几帳面に作られているのに防水性はなぜ3気圧なのだろうか。防水性を高めるとなると、クロノグラフのプッシュボタンをねじ込み式にする必要が出てくるが、それを差し置いても現行のクロノグラフにはもっと防水性が高いものも少なくない。