レイモンド ウェイル ディテールから探る“ネオ・ヴィンテージ”の秘密

2024.07.22

世界中の時計好きから継続的かつ安定的な支持を得ているヴィンテージスタイルのドレスウォッチ。近年、特に熱い注目を浴びているのが、レイモンド ウェイルの「ミレジム」コレクションだ。タイムレスな魅力を放つ“ネオ・ヴィンテージ”の秘密を詳らかにしていこう。

ミレジム スモールセコンド

ミレジム スモールセコンド
コレクション名の由来はヴィンテージを意味するフランス語「millésime」から。1930年代のセクターダイアルを緻密に復刻したスモールセコンド仕様。文字盤や外装の美しさはもちろん、こなれた価格も魅力。自動巻き(Cal.RW4251)。31石。2万8800振動/時、パワーリザーブ約41時間。SSケース(直径39.5mm、厚さ10.25mm)。5気圧防水。34万1000円(税込み)。デニムジャケット/7万400円(税込み)、ニューマニュアル。(問)insta@new_manual。その他、私物。
三田村優:写真 Photographs by Yu Mitamura
長谷川剛:文 Text by Tsuyoshi Hasegawa
星光彦:スタイリング Styling by Mitsuhiko Hoshi
加瀬友重:編集 Edited by Tomoshige Kase


世界中の時計愛好家が注目する「ミレジム」にフォーカス

ミレジム センターセコンド

ミレジム センターセコンド
サーモンカラーのダイアルは、このセンターセコンドのモデルにのみラインナップされる。またグレーダイアル、ブルーダイアル、ゴールドPVDケースも用意されている。スモールセコンドモデルに比べて1mm薄いケースとなる。自動巻き(Cal.RW4200)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約41時間。SSケース(直径39.5mm、厚さ9.25mm)。5気圧防水。28万6000円(税込み)。シューズ/11万円(税込み)、クロケット&ジョーンズ。(問)トレーディングポスト 青山本店 Tel.03-5474-8725。リング/42万2400円(税込み)、ブレスレット/4万100円(税込み)、ともにトムウッド。(問)トムウッド 青山店 Tel.03-6447-5528。ソックス/3630円(税込み)、パンセレラ。(問)真下商事 Tel.03-6412-7081

 ヴィンテージにインスパイアされた復刻時計の需要が世界的に高まり続けている昨今。その大きな理由は、稀少性と歴史の深さが時計ファンの心を刺激するからだろう。ただブームが長く続いてしまった分、復刻のパターンもある意味飽和状態。単に懐古主義的な復刻では、もはや時計好きの耳目を集めることはできないのである。タイムレスな美しさをたたえながら、時代を突き抜けた鋭いエッジも併せ持つ。そんな本当の意味での温故知新の腕時計が望まれているのだ。

 レイモンド ウェイルが2023年11月に発表した新コレクション「ミレジム」。39.5mmという通好みの小ぶりなケースを持つ自動巻き腕時計である。ジュネーブを拠点とするレイモンドウェイルは1976年に設立。その歴史は比較的浅いものの、タイムレスなクラシックコレクション「マエストロ」、独創性豊かな「フリーランサー」など、多くの良作ウォッチを擁するブランドだ。ビートルズやジャン=ミシェル・バスキアなどのアーティストとのコラボレーションにも積極的に取り組み、スペシャルなタイムピースの製作にも力を注いでいる。そんな中、新作のミレジムは23年のジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)で「チャレンジウォッチ部門」を見事受賞。同ブランドならではの芸術的感性を集約したモデルとして、俄然注目を浴びている。

ミレジム スモールセコンド

1930年代に見られたセクターダイアルを復刻。文字盤はフラットではなく、往時を彷彿させる立体的な構造を採用するため、トラックごとに複雑な傾斜と段差がつく。

 ミレジム最大の特徴が、1930年代の半ばに流行したセクターダイアルだ。時・分・秒の目盛りを異なるトラックに表示するセクターダイアル。ミレジムの場合は外周を「秒」(毎秒8振動対応の4分の1分割)、その内側のサークルを「分」、さらにその内側のサークルを「時」に分けてデザイン。スモールセコンド式のモデルのみ、6時位置に専用トラックを加えて仕上げている。またトラックごとに段差を設け、文字盤面に絶妙な立体感と奥行きを持たせているのだ。

ミレジム スモールセコンド

かつてのプラスティック製風防を想起させるボックス型風防。素材はプラスティックではなくサファイアクリスタル。ラグは長めでヴィンテージ感をアピール。ケースバック側に曲げ先端を丸く仕上げることで装着感を向上させている。

 ミレジムが“ネオ・ヴィンテージ”として時代にマッチしているのは、懐古調に走りすぎていないからだろう。スモールセコンド以外に数字を持たないミニマルなインデックス。スーパールミノバを塗布したクリーンな針。つまり、コンテンポラリーなプロダクトとも捉えられる仕上がりなのだ。そう、確かにヴィンテージから発想を得ているものの、モード服のように研ぎ澄まされたエッジも兼備しているのである。

ミレジム スモールセコンド

さらりとしたタッチと柔らかな質感が特徴のカーフストラップ。ピンバックルにはブランドロゴを、ストラップ先端にはブランドのイニシャル「W」のハンドステッチを施している。

 もちろん「ミレジム」はいずれのモデルも温故知新のディテールを持つ“ネオ・ヴィンテージ”。ただし、ヴィンテージとモダンのバランスは、個別のモデルによって微妙に異なるようだ。ヴィンテージスタイルに重きを置くなら、やはりクラシックなスモールセコンド式がいい。モダンなきれいめの服に合わせるなら、よりシンプルなセンターセコンド式の相性が良さそうだ。カラーダイアルをチョイスすれば、大人らしい遊び心も演出できるだろう。どちらを選ぶかは、お好みで。



Contact info: ジーエムインターナショナル Tel.03-5828-9080


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