GPHG2023のチャレンジウォッチ部門でグランプリに輝いた、レイモンド ウェイルの「ミレジム」。その快進撃は2024年もとどまるところを知らず、小ぶりな35mmケースモデルやムーンフェイズ、クロノグラフなどの新作が続々と発表された。これらの新作に目を向けつつ、ミレジムが持つ魅力を今一度ひもといていきたい。
野島翼:文 Text by Tsubasa Nojima
加瀬友重:編集 Edited by Tomoshige Kase
小径サイズ、ムーンフェイズ、クロノグラフも登場した「ミレジム」
ダイアル6時位置に幻想的なムーンフェイズを配したモデル。2種類のケースサイズをラインナップしており、35mmケースモデルには、ミレジムコレクションとして初めてアラビア数字インデックスが採用されている。自動巻き(Cal.RW4280)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約41時間。(左)SSケース(直径39.5mm、厚さ10.05mm)。5気圧防水。37万4000円。(右)SS+PVDケース(直径35mm、厚さ9.98mm)。5気圧防水。39万6000円(税込み)。
GPHG(ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ)2023のチャレンジウォッチ部門において、見事グランプリに輝いたレイモンド ウェイルの「ミレジム」。“ネオ・ヴィンテージ”をコンセプトとしたクラシカルなデザインや細部にまでわたる作り込み、そしてフレンドリーな価格設定は、目の肥えた時計愛好家たちを一瞬にして虜にした。その勢いはとどまるところを知らず、2024年、同社はミレジムの新作を次々と投入していった。23年に発表されたのは、実のところほんの序の口でしかなかったのだ。
24年に登場した新しいミレジムには、大きくふたつの傾向があった。サイズ展開と、付加機構の搭載だ。当初は39.5mmケースにセンターセコンドまたはスモールセコンドに日付なしのシンプルなタイムオンリーウォッチだったが、サイズバリエーションとして35mmケースのセンターセコンドモデルが登場。その絶妙なサイズ感は、女性にも着用しやすいばかりか、持ち前のヴィンテージテイストを強調するものとして、男性からも熱い眼差しを向けられることとなった。
好感をもって受け入れられたのは、ムーンフェイズを搭載したモデルと、クロノグラフを搭載したモデルも同様だ。ムーンフェイズ搭載モデルでは、職人が手作業で描き上げたユーモアあふれる顔の月がディスクに配され、クラシカルなミレジムの魅力を一層引き上げた。ケースサイズは39.5mmと35mmの2種類が用意され、どちらを選ぶか頭を悩ませた人も少なくはないだろう。また単なるサイズバリエーションにとどまらず、35mmケースには、優雅なアラビア数字インデックスを組み合わせ、ラグにラボグロウンダイヤモンドをセットしたモデルをラインナップするなど、独自の魅力を演出しているのも心憎いポイントだ。
クロノグラフ搭載モデルも、24年の話題作のひとつ。大柄でスポーティーになりがちなクロノグラフだが、本作ではコンパクトなケースを採用し、ネオ・ヴィンテージのコンセプトをぶらすことなく体現したデザインにまとめ上げた。ミニッツサークルに干渉することなく、セクターダイアルの立体感を一層強調する3つのインダイアルと、繊細さを漂わせるポンプ型のプッシャー、そしてケースの厚みを分散させることにも寄与するボックス型サファイアクリスタルなど、レイモンド ウェイルらしいパッケージングの秀逸さが光る。シックなブラック一色のほか、いわゆる“逆パンダ”ダイアルがラインナップされていることもうれしい。
3つのインダイアルをバランスよく収めた、端正なレイアウトが魅力。クロノグラフを搭載しても“ネオ・ヴィンテージ”のコンセプトは健在だ。ブレスレット仕様は、季節を問わず使いやすいこともポイント。自動巻き(Cal.RW5030)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約62時間。SSケース(直径39.5mm、厚さ12.9mm)。5気圧防水。61万6000円(税込み)。
(右)ミレジム 35 センターセコンド
ヴィンテージ感を一層高めた35mmケースのセンターセコンド3針モデル。バーガンディダイアルにローズゴールドPVDケースを組み合わせ、パーティーシーンにもふさわしい華やかさをまとう。自動巻き(Cal.RW4200)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約41時間。SS+PVDケース(直径35mm、厚さ9.18mm)。5気圧防水。34万1000円(税込み)。
これらの他にも、24年は既存モデルをベースとしたカラーバリエーションやブレスレット仕様などの新作が登場した。コレクションの誕生から1年にして、ミレジムはラインナップの幅と深さを一気に拡充し、同社を象徴する主要コレクションのひとつとしての基盤を築き上げたのだ。
レイモンド ウェイルが誕生したのは、クォーツウォッチの普及が進む1976年。懐かしくも新しい同社の時計に宿るのは、機械式時計の持つ温かさを純粋に見つめ続け、逆境を乗り越えてきた強い意志なのである。