2016年の発表以来、モーリス・ラクロアを躍進させてきたアイコン。今年は新たに、夏のイメージを強調した限定モデルが加わった。良質な外装はそのままに、鮮やかな色を打ち出した本作はアイコンの決定版だ。
Photographs by Eiichi Okuyama
広田雅将(クロノス日本版):文
Text by Masayuki Hirota(Chronos Japan)
Aikon Automatic Limited Summer Edition
創業以来、良質な外装で知られてきたモーリス・ラクロア。アイコンに加わった「リミテッド サマーエディション」は、その集大成的なモデルだ。採用されたのは、ターコイズ、ピンク、そしてオレンジの3色。いずれも発色の難しい中間色だが、色味は実に鮮やかだ。また、ストラップと文字盤の色を完全にそろえたのも、外装を得意とするモーリス・ラクロアらしい。良質なブレスレットやストラップなどを考えると、価格はかなり戦略的だ。(左)自動巻き(Cal.ML115)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径42mm、厚さ11mm)。20気圧防水。(中左)直径42mm、厚さ11mm。(中右)直径39mm、厚さ11mm。(右)直径39mm、厚さ11mm。価格はすべて32万1200円(税込み)。
今や時計業界の注目株となったのが、モーリス・ラクロアの「アイコン」だ。同社が得意としてきた良質な外装に、スポーティーなデザインを合わせ、しかも価格は戦略的。デザインコードも、同社の歴史的モデルである「カリプソ」にならったものだ。さまざまな要素を巧みに両立させたアイコンが、たちまちモーリス・ラクロアの代表作になったのは当然だろう。世界的なヒットを受けて、アイコンには多くのモデルが追加された。
そんなアイコンの2023年新作が、「アイコン オートマティック リミテッド サマーエディション」だ。これはアイコンのデザインを踏襲しつつ、夏のビーチをイメージした色を採用した限定版。「ターコイズ」「ピンク」「オレンジ」の文字盤には、それぞれブレスレットとFKM(フッ素ゴム)製ラバーストラップが付属する。
アイコンが成功を収めた理由のひとつは、大きな文字盤だ。ベゼルを細く絞り、文字盤を広げることで、このモデルは、ありきたりなスポーツウォッチとは違う印象を与えたのである。また、大きな文字盤に多彩な仕上げや色を加えることで、アイコンは高級感と個性を併せ持つようになった。リミテッド サマーエディションは、その集大成と言えるだろう。クル・ド・パリ模様を施した立体的な文字盤には、ラッカーで鮮やかな色が施されている。価格を超えた仕上がりは、高い品質をうたってきた同社ならではだ。また、FKM製ラバーストラップや5連のブレスレットも、価格以上の質感を見せる。
ケースサイズは直径42mmと39mm。わずかな違いだが、できるだけ広い層に対応するのも、モーリス・ラクロアらしい細やかさだ。アイコンの魅力をいっそう強調したアイコン オートマティック リミテッド サマーエディション。各色限定888本なのが惜しいほどの良作だ。