2013年に発表された「ポントス S ダイバー」は、高性能でありながら薄いケースを持つ、アーバンダイバーズウォッチの先駆けだった。それから10年。本作はより薄くてスタイリッシュなケースとともに復帰を果たした。
300m防水でありながらも、ケースの厚みをわずか12mmに留めたダイバーズウォッチ。風防内に回転ベゼルを持つモデルとしては最薄級だが、その性能はフリーダイビング世界チャンピオンのお墨付き。モーリス・ラクロアらしい良質な外装を持つにもかかわらず、価格は極めて戦略的だ。自動巻き(Cal.Ml15)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径42mm、厚さ12mm)。30気圧防水。26万6200円(税込み)。
Photographs by Eiichi Okuyama
広田雅将(クロノス日本版):文
Text by Masayuki Hirota(Chronos Japan)
フリーダイビング世界チャンピオンが認める、パフォーマンス+αの存在感
2013年の発表時に、関係者たちから高い評価を受けたのが「ポントス S ダイバー」だ。その理由は、薄さと高性能を両立したため。600m防水にもかかわらず、ケースの直径は43mm、厚さわずか15mmしかないこのモデルは、いわば今の主流を先駆けたダイバーズウォッチだった。
本作は数年後に生産中止となったが、高性能なのにシチュエーションを問わず使えるポントス S ダイバーを惜しむ声は年々高まった。その声を受けて今年、モーリス・ラクロアはポントス S ダイバーのデザインを継承した、全く新しいモデルをリリースした。見た目は前作にほぼ同じ。しかし、時計としてはいっそうの進化を遂げた。
前作はヘリウムエスケープバルブを持つ600m防水だったが、本作は300m防水に改められ、代わりにケースの厚みは12mmとさらに薄くなった。今や厚さ12mmのダイバーズウォッチは珍しくないが、回転ベゼルがインナーベゼル化されていることを考えれば、本作は最薄級だろう。また、フリーダイビングの世界チャンピオンであるリディヤ・リジクの協力を得て、このモデルは過酷な環境でも使えることが実証されている。加えて、文字盤もブラッシュアップされた。前作が採用したのは、フラットなラッカー仕上げの黒文字盤。しかし新作は、下地を荒らすことで視認性を高めたほか、より汎用性の高い、ホワイトラッカー仕上げの文字盤も追加された。優れた外装で知られるモーリス・ラクロアらしく、文字盤の仕上げも高級機に肩を並べる。
驚くべきはその価格だ。300m防水と、良質で薄いケースを持つにもかかわらず、価格は20万円台半ば。夏にふさわしい時計を探す人にとって、新しいポントス S ダイバーはうってつけの1本となるに違いない。