ケースやダイヤル、インデックス、針、ストラップなど、すべてをまっ黒にした時計がいまの時計界の一大潮流になっているのは、きっとよくご存じのことだろう。だが、まっ黒だと時間がわかりにくい。時間の見やすさを最重要とする時計にとって、だからまっ黒の時計など本来「ありえないもの」なのだ。
ではどうして、まっ黒の時計が人気になったのか。
すべてをまっ黒にした時計は、2006年にウブロが発表した「ビッグ・バン オールブラック」がその始まり。それは「時間が見えなくてもよい」という、これまでの時計界にはなかった(ありえなかった)まったく新しい発想のものであった。そしてその新しさが人気を博した。それにまっ黒の時計は、PVDやDLCなどの仕上げや、セラミックやカーボンといった素材が、旧来の時計とは違う新しい魅力でもあった。つまりまっ黒の時計とは、新しい時代の新しい時計なのだ。
ということで今年も、まっ黒のパイオニアであるウブロや、黒をブランドアイコンとするシャネル、ニューフェイスのモーリス・ラクロアなど、魅力的な新作が多数登場。その粒ぞろいの5本をご紹介しよう。
第5位
モーリス・ラクロア「アイコン オートマティック ブラック」
直径42mm
自動巻き(Cal.ML115)
26石
2万8800振動/時
20気圧防水
SS
21万5000円(税別)
「アイコン」は1990年代のヒット作「カリプソ」をリメイクして2016年に生まれたコレクション。当初はクォーツ式のみであったが、2018年より自動巻きの3針とクロノグラフが登場し、より人気がアップした。これは今年の新作でオールブラックはコレクション初。針とインデックスのスーパールミノバもブラックカラーされている。
第4位
ブルガリ「オクト フィニッシモ セラミック」
直径40mm
自動巻き(Cal.BVL 138)
36石
2万1600振動/時
30m防水
セラミック
171万円(税別)
2017年に発表され、トゥールビヨン、ミニッツリピーターに続く3つ目の世界最薄記録を樹立した、自動巻き3針モデルのケースとブレスレットをセラミックにした新作。ケース厚は若干増したが、それでも5.5mmと超薄型。ダイヤルもブラックセラミック、針とインデックスもブラックのルテニウムコーティングにされている。
第3位
ロジェ・デュブイ「エクスカリバー スパイダー カーボン³」
直径45mm
手巻き(Cal.RD509SQ)
19石
2万1600振動/時
5気圧防水
カーボン
世界限定28本
3035万円(税別)(ブティック限定)
5月に発表されたフルカーボンの新作。カーボンケースはこれまでにもあったが、カーボンブレスレットはこれが初。ムーブメントの地板やブリッジもカーボンで、さらに得意のスケルトン仕様により、わずか81グラムの超軽量にしたのも凄い。ブティック限定販売の特別作だが、このブレスレットは魅力。いち早いレギュラー化を望む。
第2位
シャネル「J12 ファントム」
直径38mm
自動巻き(Cal.12.1 エディション ノワール)
27石
2万8800振動/時
200m防水
高耐性セラミック
65万5000円(税別)(8月上旬発売予定)
「なにも変えずにすべてを変える」というコンセプトでフルモデルチェンジされ、今年のバーゼルでデビューしたニュー「J12」。一見なにも変わっていないように見え、しかしパーツの70%以上を変更。新ムーブメントの搭載ほか、回転ベゼルの幅を狭く、リュウズを小さくなど、よりエレガントに進化。これはそのひとつで、すべてを黒にしたのが特徴。
第1位
ウブロ「ビッグ・バン ウニコ ブラックマジック」
直径42mm
自動巻き(Cal.HUB1280 UNICO)
43石
2万8800振動/時
10気圧防水
セラミック
200万円(税別)
「ブラックマジック」も「オールブラック」と同じ2006年に誕生した、ウブロのまっ黒のコレクション。これはジュネーブで発表された新作で、45mmから42mmにケースを小型化したことに合わせ昨年再設計した自社製クロノグラフムーブメント「ウニコ」を搭載。クロノグラフ秒針の先端やインデックスに赤を挿し色にしたのもスパルタンで格好いい。