今日の世界的な時計人気が始まったのは1980年代末から1990年代初頭にかけてのこと。以来、約30年のあいだ時計はさまざまに進化してきているが、そのなかでももっとも目覚ましい進化を遂げたのがケース素材だろう。
時計ケースといえばゴールド、プラチナ、ステンレススティールのいずれかというのが通常であったのが、チタニウムやセラミックといった新時代の素材が次々と使用され始める。さらにカーボンファイバーやグラスファイバーやそれらの複合材といった、そもそもはF1カーや航空機、宇宙ロケット、兵器などのハイテク産業で開発された最先端素材が使われるようになる。そうしていまや「新素材」や「先端素材」が時計界の重要なキーワードになっているのだ。
ここに挙げたのは、そんな先端素材を使用した今年の新モデルの代表たち。どれもが独創的な素材や作風であるため、順位をつけるのは難しい。そのため今回は価格順でご紹介することとした。
シャネル「J12」
直径38mm
自動巻き(Cal.12.1)
28石
2万8800振動/時
200m防水
高耐性セラミック
63万2500円(税別)
2000年に誕生した「J12」はケースとブレスレットをオールセラミックにしたのが大きな特徴であった。しかも際立っていたのがその美しさだ。セラミックの時計はこれまでにもあったが、セラミックをジュエリーのように高貴に美麗に仕上げたのは「J12」が初。すなわち「J12」はセラミックを高級時計の素材としたパイオニアなのだ。そして今年「J12」は完全リニューアル。より美しくエレガントに進化した「J12」は間違いなく今年いちばんの話題作のひとつである。
IWC「パイロット・ウォッチ・ダブルクロノグラフ・トップガン・セラタニウム」
直径44mm
自動巻き(Cal.79420)
29石
2万8800振動/時
6気圧防水
セラタニウム®
156万円(税別)
IWCが開発・特許取得した「セラタニウム®」は特殊なチタニウム合金に熱加工を加えることで表面構造をセラミック化させた先端素材。チタニウムとセラミックの双方の利点を併せ持つのが特徴で、チタニウムらなではの軽さと堅牢性を持ちつつ、セラミックと同等の硬度や優れた耐摩擦性、耐傷性、耐腐食性などを備える。このモデルはケースとリュウズとプッシュボタンのすべてを「セラタニウム®」に。それによりすべてをマットブラックにしているのも特徴だ。
パネライ「サブマーシブル BMGテック™ -47mm」
直径47mm
自動巻き(Cal.P.9010)
31石
2万8800振動/時
300m防水
BMGテック™
168万円(税別)
ケースは「BMGテック™」で逆回転防止ベゼルは「カーボテック™」という、パネライの誇る2つの革新的新素材を初めて組み合わせたモデル。金属ガラス=リキッドメタルの「BMGテック™」は高い耐食性や剛性、耐衝撃性、強耐磁性を備えるなどまさに時計ケースに最良の素材。「カーボテック™」はカーボンファイバーの薄いシートを高圧下で圧縮し積層したもので超軽量かつ超高硬度で耐食性に優れる。シートを重ねたことで生まれる独特の模様も魅力だ。
ゼニス「デファイ インベンター」
直径44mm
自動巻き(Cal.9100)
18石
12万9600振動/時
10気圧防水
Ti×アエロナイト
204万円(税別)
2017年のスペシャルモデル「デファイ ラボ」で発表され世界的な話題となった革新的機構「ゼニスオシレーター」が遂にレギュラーモデルで登場。3世紀以上ものあいだ機械式時計に使われ続けているテンプに代わる革新的な調速脱進機構で、それが限定品でなく手に入れられるようになったのだ。そしてこのモデルのもうひとつの見どころが、ベゼルに使用された「アエロナイト」。超軽量の先端素材で多孔質の独特の質感が洒落たアクセントにもなっている。
ウブロ「スピリット オブ ビッグ・バン トゥールビヨン カーボンブルー」
幅42mm
手巻き(Cal.HUB 6020)
25石
2万1600振動/時
3気圧防水
カーボンファイバー
世界限定100本
1003万円(税別)
最先端素材のいち早い採用や、さまざまなカラーにしたサファイアクリスタルの多層構造ケース、世界で初めて鮮やかな赤を実現したセラミックのケースなど、時計界随一の「素材使いの名手」であるウブロ。今年はこのカーボンファイバーにブルーのグラスファイバーを混合したフォージドカーボン=鍛造カーボンのケースで魅せてくれた。スケルトンダイヤルのインデックス部をブルーのサファイアクリスタルで色合わせしているのもポイントだ。