昨年あたりから増えてきた、手巻きモデル。それが今年は、さらに増えた。
しかも注目すべきは、手巻き式ムーブメントの新作、が増えたこと。そう、新開発ということ。ここに挙げた5モデルも、すべて新開発の手巻き式ムーブメント搭載である。
手巻きは、いうまでもなく、主流ではない。機械式時計全体の数%。手巻き好きの時計マニアの多い日本でも5%ほどだという。しかしそれなのに、なぜ手巻きモデルが増えているのか。さらに新開発までされているのか。その本当の理由は、残念ながら、わからない。
だが、手巻きが時計の基本であるのは確かなこと。だからそれが増えるのは、よろこぶべきだろう。それに主流ではない手巻きが増えるのは、時計がより幅広くなったということ。それもよろこぶべきことだ。
そして何より、そんな手巻きを、この5ブランドのような名門たちがつくってくれたことが、時計好きにはうれしい。手で巻き上げるときの、あの指先に伝わってくる感じとか。毎日、同じ時間に巻くことだったりとか。そういう、時計との関係、が手巻きならではの愉しさ。それを、ぜひ、味わっていただきたい。
ブライトリング「プレミエ B15 デュオグラフ 42」
直径42mm
手巻き(Cal.B15)
27石
2万8800振動/時
10気圧防水
SS
116万6000円(税込)
「プレミエ ヘリテージ」は1940年代に誕生した「プレミエ」をモチーフにした新コレクション。オリジナルのエレガントなデザインを踏襲するのが特徴だ。このモデルもそのひとつで、やはり1940年代に誕生したスプリットセコンドクロノグラフ「デュオグラフ」を再現。2017年発表の自社製スプリットセコンドクロノグラフムーブメント「B03」を手巻きに改造、日付表示を外し、インダイヤルも3つから2つにするなど、オリジナルさながらにしたのが見どころ。また、スプリットセコンドクロノグラフでこの価格というのも素晴らしい長所だ。
ハミルトン「イントラマティック クロノグラフ H」
直径40mm
手巻き(Cal.H-51)
25石
2万8800振動/時
10気圧防水
SS
27万6100円(税込)
1968年に発表したブランド初のクロノグラフの「クロノグラフ A」と「クロノグラフ B」を復刻した新作。「クロノグラフ A」は白ダイアルに黒インダイアルの「パンダダイアル」、「クロノグラフ B」は黒ダイアルに白インダイアルの「逆パンダダイアル」だ。そして新作の見どころが、オリジナルと同じ手巻き式のクロノグラフムーブメントを新開発したこと。しかも日付表示なしというのがマニア好み。という一方で、パワーリザーブは約60時間と現代的なのも長所。ケース径もオリジナルの36mmから40mmへと現代的にサイズアップされている。
モンブラン「ヘリテイジ ピタゴール スモールセコンド リミテッドエディション 148」
直径39mm
手巻き(Cal.MB M14.08)
19石
1万8000振動/時
5気圧防水
18KRG
世界限定148本
231万3300円(税込)
クロノグラフの名門として知られるミネルバが1940年代に製作した手巻き3針ムーブメント「キャリバー48」は黄金分割を用いた設計による直線的なブリッジが特徴。同ムーブメント搭載モデルは「ピタゴール」(ピタゴラス)と名付けられた。これはその「キャリバー48」からインスピレーションを得て、同じく黄金分割を用いて新開発した手巻きムーブメントを搭載したモデル。チラネジ付きの直径10mmのテンプ、5振動のロービート、というクラシックさが堪らない魅力。それでいて約80時間のロングパワーリザーブを実現したのも素晴らしい。
オメガ「デ・ヴィル トレゾア スモールセコンド」
直径40mm
手巻き(Cal.8926)
29石
2万5200振動/時
3気圧防水
SS
82万5000円(税込)
1949年に誕生した「トレゾア」は、名作ムーブメント「30mmキャリバー」を搭載したことから、内部に「トレゾア」(宝物)があるという意味で名付けられたのが始まり。現在は「デ・ヴィル」コレクションのひとつになっている。これはその新作で、手巻きスモールセコンドの新ムーブメントは数十年ぶり。オリジナルと同じ日付表示なしにしたのも好ポイントだ。同ムーブメントはコーアクシャル マスター クロノメーター キャリバーでスイス連邦計量・認定局(METAS)により業界最高水準の精度、性能、耐磁性に関する認定を受けている。
パテック フィリップ「カラトラバ 《クルー・ド・パリ》 6119」
直径39mm
手巻き(Cal.30-255 PS)
27石
2万8800振動/時
3気圧防水
18KRG
339万9000円(税込)
リファレンスの示すように「5119」の後継機となる新モデル。ここしばらく生産されていなかったホブネイル・パターンベゼル=クルー・ド・パリベゼルの復活がファンには嬉しい。そして大注目が、新開発された手巻き式のムーブメントだ。これまでの基幹ムーブメント「Cal.215」よりも直径を大きく、ツインバレルなどによりロングパワーリザーブや高トルクを実現したのが優れた長所。一方、厚さが「Cal.215」と同一の薄型にされているのも注目点。今後のパテック フィリップの手巻きのベーシックとして活用されることになるのだろう。
https://www.webchronos.net/news/63243/
https://www.webchronos.net/news/62128/
https://www.webchronos.net/news/62847/