PURE GERMAN TECHNOLOGY
ユニット化されたグラスヒュッテ式クラッチ巻き上げ機構と 新生モリッツ・グロスマンの全機に共通する特徴が、片持ち式のバランスブリッジ。これは明らかにイギリス製懐中時計の特徴であり、後にグロスマンをはじめ、グラスヒュッテの時計師たちも採用した様式である。ただし古典的とはいえ、ディテールはわずかに異なっている。ヒゲ持ちをテンプ受けに直接固定するのは、いかにも19世紀半ばのスタイル。しかしプレートではなく、バネ性を持たせたクリップで押さえているのは、分解しやすさを考慮した“シュナイダー流”だ。また受けを簡単に外せるよう、地板と接する部分に半円の切り欠きを設けたのも、優れたアイデアである。かつては四角い切り欠きが多かったが、あえて丸くしたのは、デザインのバランスを取るため。受けの上面と受けを留めるネジの高さを同じに揃えたのも、かつてない要素だ。審美性が主な理由だろうが、ネジの高さと比較することで、受け上面の歪みをチェックできる。片持ちの受けだと歪みが気になるが、部品の厚みと剛性は十分以上だ。 |
小型化が進む 初作のベヌーが搭載するCal.100.0(写真上)で、入念すぎるほどの後退式コハゼを設計したモリッツ・グロスマン。ただパワーリザーブ機構の邪魔になるため、後継機のCal.100.1とCal.100.2(写真中)では、コハゼの位置が変更された他、機構自体もシンプルになった。規制バネが露出していないのは、角穴車と香箱の間にバネを差し込んだためである。なおコハゼと受けが直接接触するのを避けるため、コハゼの下にはもう一枚プレートが差し込まれている。シンプルだが、耐久性に対する細やかな配慮はいかにも同社らしい。薄さを重視したCal.102.0(写真下)では、コハゼはいっそう簡潔になった。コハゼの下に薄いプレートを埋め込むのは、Cal.100.1/2と同じ。ただ角穴車と香箱の間隔を詰めるため、コハゼの規制バネは受け上に移動された。受けと接触して傷が付きそうだが、子細に見ると、受けとバネの接触を防ぐべく、規制バネを少し浮かせて配置している。 |