OVERSEAS ULTRA-THIN
濃密なディテールを凝縮させた最新の薄型2針
オーヴァーシーズ・ エクストラフラット
Cal.1120を搭載した薄型2針モデル。ケース厚はわずか7.5mmしかない。明らかに好事家向けの時計だが、汎用性は高い。自動巻き。36石。1万9800振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KWG(直径40mm)。5気圧防水。ブティック限定モデル。予価640万円。今夏発売予定。
2016年に発表された新型オーヴァーシーズ。主力は3針だが、222との継続性を感じさせるのは、18KWGケースを備えた「エクストラフラット」だろう。ムーブメントは同系列機(日付なし)のキャリバー1120。ケース径と厚さも、やはり222を思わせる。
もっとも細部の作りには、222から約40年という経験が反映されている。まずは文字盤。222や旧オーヴァーシーズのようなツヤ消しではなく、新型はポリッシュラッカー仕上げである。スポーティな時計としてはかなり珍しいが、企画を担当したクリスチャン・セルモニは「シンプルな要素をキープ、あるいはさらに強調させるため、ラッカーで光沢感がある仕上げを施した」と説明する。同社のお家芸となったラッカー仕上げ。あえて採用するだけあって、表面に歪みもなく発色も良好だ。また時分針が立体的なものに改められた結果、文字盤のツヤが増したにもかかわらず、視認性はむしろ改善された。
ユーザーにとっていっそう意味のある改良は、インターチェンジャブル式のブレスレットだろう。IWCやカルティエがすでに採用しているが、オーヴァーシーズの価格帯では初であろう。しかも重い18KWG素材のブレスレットを交換式にした例は他にない。非常に大胆な試みだが、ケースとブレスレットの取り付け部は剛性が高く、ガタは一切ない。「耐久性はまったく問題ない」というヴァシュロン・コンスタンタンの公式見解通り、汎用性は高く、しかもタフに使えるだろう。
スポーツシーンに向くかはさておき、上質な実用時計として、非凡な完成度を備えたオーヴァーシーズ・エクストラフラット。搭載ムーブメントの魅力は、今さら強調するまでもない。しかし丁寧に作り込まれた外装と優れた使い勝手は、好事家以外にも強く訴求するだろう。価格は途方もないにせよ、だ。
新しいデザインが与えられたベゼル。切り欠きは前作の8つから6つに減らされ、形も控えめとなった。なお新型オーヴァーシーズのベゼルは、ねじ込み式ではなく、ケースバックからネジで固定する。文字盤と針。薄型モデルのため、3針モデルやクロノグラフのような立体感はない。しかし針やインデックスに多面カットを与えた結果、巧まぬ立体感を盛り込むことに成功した。とりわけ2面カットの針は、新型オーヴァーシーズの大きな魅力だ。もっとも2針モデルに限っていうと、時分針はもう少し短いほうが、見た目の上でも他モデルとの整合性の上でも、望ましいはずだ。ケースは標準的な3ピース。しかしその意匠は、原型の222に酷似する。もっともケースの側面は、裏蓋に向かってわずかに絞られており、222のような“シリンダーケース”ではない。 交換可能なブレスレットとストラップ。中心のヒンジだけで支える設計だが、下のラバーストラップが示すように、強固なスチールプレートを介して固定される。ケースバックからのぞくCal.1120。リュウズ下に切り欠きはないが、ケースが下方向に向けて絞られているため、爪を差し込むスペースがある。実用性に対する細やかな配慮だ。なお現行品らしく、リュウズのガタは一切ない。
つづきは雑誌『クロノス日本版』でお楽しみください。
記事掲載号 2016年6月号(No.65) 定期購読申し込み/最新号・バックナンバーのご案内
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