ギヨシェ彫り
GUILLOCHAGE
ブレゲ・マニュファクチュールのハイライトが、手作業によるギヨシェ彫りだ。
現在、多くのメーカーが、プレスによるギヨシェやCNCで自動的に彫るギヨシェを採用する。
機械の進歩により、そういった手法でもギヨシェの仕上がりは格段に良くなった。
しかし、それらは、ブレゲの個性的なギヨシェ彫りに比べると、明らかに見劣りするのも事実である。
2015年以降、ブレゲはギヨシェの機械と職人をロリエントにまとめるようになった。
27台ものギヨシェマシンを持つ工房は、世界広しといえどもブレゲだけだろう。
「ブレゲのギヨシェは、プレスでもCNCの自動加工によるものでもありません。すべて職人がローズエンジンを使って手作業で彫っています。文字盤の素材は18金」。かつてブレゲのギヨシェ彫りはジュウ渓谷の各所で行われていた。だが、2015年以降、ブレゲはすべての設備と職人をロリエントに集約した。世界広しといえども、ギヨシェの機械を27台も擁する工房は他にはないだろう。責任者は次のように説明してくれた。「以前は昔の機械を直して使っていました。しかし6年前から機械を内製するようになりました。昔との違いは、作業台に手を置けること、またカムを支える軸にベアリングを埋め込んだ点ですね。そのため、加工時の振動が文字盤に伝わりません」。
機械は最新になったが、ギヨシェ彫りの作業は200年前とまったく同じだ。円盤の模様をなぞり、それを手の力だけで18金の素材に転写していく。「手で押す加減を間違えたり、途中で途切れたりするとおしまいだね。とりわけMOP文字盤にギヨシェを彫る場合、一気に完成させないとダメになる」。ギヨシェ彫りを与えられた文字盤は、検査兼仕上げの工程に回されて完成だ。ここでは職人が、木の棒でひとつひとつ、ギヨシェのバリを取り除いていた。
最新の工作機械や合理的なプロセスを誇る工場が増える中、機能性に対する冷徹さと、審美性に対する情熱を両立させたブレゲ・マニュファクチュールの異質さは際立っていた。こういう工房が作る時計には、当然ながら、相応の性能と美を期待して良いだろう。