大型の日付表示窓に対し、ポインター式の月表示針は極端に短く存在を希薄とし、シンプルさが際立つ。これらカレンダー機構に加え、霧が晴れていくかのように色がグラデーションするフュメダイアルが審美性をさらに高めている。にじむような仕上がりは、H.モーザー独自の技法であり、ブランドを象徴する。その仕上がりは上質だ。
2枚のディスクを左右に並べるのに比べ、上下2層式の日付表示は2桁の間を断絶する段差やフレームがなく、また1~9日の間は1桁表示で数字を窓の中央に置くことができ、見栄えを損なうことはない。さらに上下2層の日付ディスクは、永久カレンダーに採用されたことで、大きな見せ場も与えられた。それは小の月の月末に訪れる。30日あるいは2月であれば28日や29日を表示している窓は、新たな月を迎える深夜0時に、上側のディスクが動いて下側のディスクを隠し、瞬時に1日へと表示が移行するのだ。この動きは他にはない。
閏年表示も実は備わり、それは裏蓋側にこれまた控えめに配置されている。前述のユリス・ナルダンの永久カレンダーと同じく連続型を採用し、リュウズ操作でカレンダーは早送りも逆戻しも可能。シンプルな外観と同じく、操作も簡潔である。
【美しいカレンダー表示を求めて】
Part.1:カレンダー表示進化論