ムーンフェイズ再発見[月齢表示高精度化への挑戦]

2017.05.30

ダ・ヴィンチ・パーペチュアル・カレンダー
初出1985年。簡潔な永久カレンダー機構は、リュウズひとつですべて操作可能な平易さと、122年で1日の誤差という極めて精密な月齢表示をもたらした。設計者はクルト・クラウス氏。今なお、時計史に燦然と輝く大傑作だ。自動巻き(Cal.79261)。39石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約44時間。参考商品。

最大の特徴は、1日に1回動くデイトリングによって、すべての永久カレンダーを動かす点。そのため、操作が簡単になっただけでなく、ムーブメントに空きスペースを設けることが可能になった。そこに歯を増やした中間車を設けることで、ダ・ヴィンチの月齢表示は、かつてない正確さを得るようになった。


 この設計をさらに発展させたのが、ダ・ヴィンチ・パーペチュアル・カレンダーの月齢表示だ。設計としては、ルクルトの例示した中間車を増やした月齢表示に酷似している。IWCは、その中間車のギアを拡大し、その歯車をより細かく切ることで、29・53125日で月齢1周期とした。つまり、122年に1日しか狂わない精密なムーンフェイズを可能にしたのだ。

 ギアを細かく切ることで、かつてない高精度な月齢表示をもたらしたダ・ヴィンチ。ムーブメントのサイズを拡張すれば、月齢表示に噛みあう中間車を大きくでき、さらに歯を細かく切れるだろう。表示はさらに精密になるはずだ。こういった手法で生まれたのが、ポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダーのムーンフェイズだ。拡張したムーブメントは中間車のギアを拡大するのに適しており、果たして、この時計の月齢表示は、577年半に1日しか狂わない。

 手法としてはごくオーソドックスなものだ。しかし、IWCが実現した、細かく歯を切って精度を高める手法は、以降、ムーンフェイズのあり方を劇的に変えることとなったのである。

Contact info: IWC Tel.0120-05-1868

【ムーンフェイズ再発見】
Part.1:[ギミックを超える精度と実用性]