時計の下に写っているのが、月齢を設定する際、分単位の月齢を照会するための早見表。ムーンディスクに記された8区分線を目印にして、直近の月齢を選んで分単位で設定する。手巻き(Cal.HMC348.901)。26石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約7日間。Pt(直径40.8mm)。日常生活防水。620万円。イースト・ジャパン Tel.03-3833-9602
さて、分単位の精度で読み取るとはいかなることか? ここで、最もシンプルなムーンフェイズ機構を解説しよう。1枚のムーンディスクには便宜的に用いる月齢周期29.5日の倍の59枚の歯が刻まれている。この歯を1日に1枚送ることで、新月から次の新月までのひとつのサイクルを、便宜的な月齢周期29.5日をかけて送るというものだ。だが、当然ながら、月齢周期を便宜的に29.5日としている以上、実際の月の運行とのずれは蓄積する一方だ。加えて、この方式では1日に1回だけムーンディスクを送るだけなので、普段目にするダイアル上のムーンディスクは当然のことながら、微動だにしない。非常に静的な表示に終始するのみだ。
それに対して、このエンデバー・ムーンは、一般的なムーンフェイズ機構を「静的」もしくは「非連続型」とするならば、「動的」または「連続型」と形容することができる。最大のポイントであり、一般のムーンフェイズ機構との大きな相違点は、ムーンディスクが、時刻を表示する時針(短針)の付いたアワーホイール(ツツ車)と連結し、常に少しずつ駆動しているという点だ。しかも、ムーンディスクを駆動するまでに2枚の中間車を経由させ、12時間で1周するアワーホイールの回転速度をさらに減速させることで、実際の月の運行とのずれを1日あたり0.23秒まで抑えることを可能にした。この精度を1日の誤差に換算すると先ほどの1027.30年後となるのだ。
実は、エンデバー・ムーンのムーンディスクがアワーホイールと連結し、その駆動力を通常時刻輪列から常に得ているからこそ、この連続型のムーンフェイズは、分単位の精度で読み取り、設定し、予測することができるのだ。ただ、これを可能にするには、必ずしなければならないことがある。その初期設定において、ムーンディスクそのものを分単位の精度で設定することだ。
これは、論理的に考えれば、至極当たり前のことだが、この設定を可能にするため、エンデバー・ムーンには、分単位で月齢を設定できる早見表が付属している。それも、月相を8区分し、UTCを基準にしたものである。