1960年、9Pの輪列を受け継ぎ、自動巻きとして開発されたのがキャリバー12Pだ。ムーブメント径を拡大し、受けと同じ高さにマイクロローターを収めることで厚さ2・3㎜という自動巻きとしては驚異的な薄さを実現した。現在でも世界最薄の自動巻きムーブメントとして、歴史にその名を刻むが、ただ薄いというだけでなく、堅牢性と汎用性を備えていたことを忘れてはならない。
時を経て、1998年に登場した9Pに替わる手巻きムーブメントがキャリバー430Pだ。2番車をオフセットした輪列や大きな3枚の受けは9PのDNAを受け継ぐ。部品数は増えたが生産性は向上した。
そして2010年、12Pの50周年を記念して開発されたのがマイクロローター搭載の自動巻きキャリバー1200Pである。輪列設計を見ると手巻きムーブメントの430Pの輪列を巧みに応用しているのが分かる。とはいえ、単純に転用したということではない。歯車自体は430Pよりも薄くなり、ムーブメント径を29・9㎜へと拡張したことで、2番車からガンギ車までを一直線上に配置。そうして捻出したスペースに、受けと同じレイヤーでマイクロローターを組み込み、薄型自動巻きを実現したのである。各部品を新たに設計しているところにも、12Pから50年を経て開発された現代のムーブメントの矜持を感じさせる。
1957年に開発されたピアジェ初となる手巻きの薄型ムーブメント。ムーブメントの厚さをわずか2mmに抑えたことにも驚くが、極力一体化した強固なブリッジとオフセットした輪列にすることで、薄型とは思えない堅牢性も確保している。小径というハンディキャップを補うように、振動数は1万9800振動/時という当時としてはハイビートを採用している。直径20.5mm、厚さ2mm。手巻き。1万9800振動/時。18石。パワーリザーブ約36時間。部品数89点。
Cal.9Pに替わる手巻きムーブメントとして開発されたピアジェの自社製機械式ムーブメント。オフセットされた輪列や受け3枚で強固に固定される構成はCal.9Pと同じだが、秒針停止機能が追加された。また、部品数が89点から131点に大幅に増えているが生産性は向上した。直径20.5mm、厚さ2.1mm。手巻き。2万1600振動/時。18石。パワーリザーブ約43時間。部品数131点。主ゼンマイのトルク240g・mm、テンワの慣性モーメント2.9mg・cm2。
Cal.12Pの50周年記念として開発されたマイクロローター搭載の自動巻き。Cal.430Pの輪列を応用し、拡張した地板に受けと同じ高さでローターを組み込むことで薄型化を実現している。ムーブメント自体は薄いがコインのエッジのように外周に厚みを持たせることで剛性を与えた。直径29.9mm、厚さ2.35mm。自動巻き。2万1600振動/時。25石。パワーリザーブ約44時間。部品数180点。主ゼンマイのトルク240g・mm、テンワの慣性モーメント2.9mg・cm2。
2012年、ピアジェが発表した「ピアジェ アルティプラノ」自動巻スケルトンモデルに搭載されるキャリバー1200Sは、1200Pのスケルトンバージョンである。厚さ2.4㎜のムーブメントの剛性や輪列の安定性に加えて機能性、そしてゼンマイ巻き上げや時刻合わせなどの操作性にも影響を与えることなく、地板と受けを削り、スケルトナイズするには極限の専門技術が必要となる。全体的な強度や耐久性を確保するため、設計そのものにまで手が加えられ、調整に3年以上の研究開発期間を要したという。例えば、ムーブメントを確実かつ極めて薄くするために筒車の最薄部を0.11㎜までスリム化したこともそのひとつだ。いずれにせよベースとなる1200Pがそもそも剛性に優れた堅牢なムーブメントであったという大前提があればこそ実現したのは揺るぎない事実だ。
ピアジェのマイクロローターの歴史は、ドレスウォッチとしての薄型化=高級化が目的であったが、それを支える堅牢さの追求でもあったことを忘れてはならない。
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【マイクロローター新時代】
Part.1:[なぜマイクロローターは開発されたのか?]
Part.2:[薄型化と頑強さ、高精度を実現した 常識を覆すパネライ Cal.P.4000]