L.U.C開発にあたり、何事においても一流を求めるカール-フレドリッヒ・ショイフレ現共同社長が、ある意味、採算度外視で開発した、最初から最良を目指した妥協なきムーブメントがL.U.C 1.96。現在の名称はCal.L.U.C 96.01-Lである。ローターの回転効率を上げるためにボールベアリングを用い、両方向巻き上げ式を採用するなど、現在でも通用する完成度の高いマイクロローター搭載の自動巻きだ。C.O.S.C.認定クロノメーター。ジュネーブ・シール取得。
1985年1月1日、カール-フレドリッヒ・ショイフレ氏(現共同社長)はエンジニア、技術者、時計修復士、そして、ふたりの優れた時計師からなる小さなシンクタンクを組織した。目的は複雑時計の基礎を築くこと。ショイフレ氏には、近い将来、会社の独立性を保つためには、自社でムーブメントを製造できることが不可欠になるという確信があった。また、機械式時計がかつての地位を取り戻すということも信じていた。
93年秋、自社製ムーブメント開発のプロジェクトが極秘裏に立ち上げられた。フルリエを拠点とする有名な時計師、ミシェル・パルミジャーニ氏もそのメンバーのひとりだった。完全に秘密を守るため、開発に当たる工房は奥まったフルリエの地に定められた。ショイフレ氏が新型ムーブメントに求めたのは、次の要件であった。マイクロローターを使用した非常に信頼性の高い自動巻きムーブメントであること。ロングパワーリザーブであること。そして、複雑機構を自在に付加できること。さらに、完璧な仕上げと優れた美観を持つこと。
マイクロローター 自動巻き上げシステム
ショパールL.U.Cのマイクロローターによる自動巻き上げ機構。マイクロローターに備えられた三角形状のカムが、巻き上げレバーのローラーに接することで、レバーを左右に振幅させる。レバーに取り付けられたふたつのインバータ(ラチェットに相当)が、レバーの振幅運動によって前後に反復し、香箱に連結する歯車を引っ掛けながら一方向に回転させることで、香箱内の主ゼンマイを巻き上げる。
1950年に特許を取得したIWCのペラトン自動巻き機構。設計者はアルバート・ペラトン。ローターの両方向の回転運動を爪(ラチェット)の前後の反復運動に換えて、ゼンマイを巻き上げる。偏心した駆動カムがロッキング・バーを左右に動かすと2本の爪も左右に動く。その2本の爪がそれぞれにラチェットホイールを引き寄せてゼンマイを巻き上げる仕組み。
ショイフレ氏の目標は、瞬時に認識できる優れた時計であると同時に、創業者への敬意を表するために、生まれながらにして古典的な外観を持つことであった。2年後に最初のムーブメントが開発されたが、直径26㎜のムーブメントは、まだショイフレ氏の要求を満たしておらず、理想から程遠いものだった。締め切りが近づくなか、開発者たちはさらなる試行錯誤を続け、最終バージョンが95年のクリスマスに、キャリバーL.U.C 1.96の20個のプロトタイプとして発表された。直径は27㎜に拡大され、精度はクロノメーター基準を満たし、マイクロローターは両方向巻き上げ、さらにツインバレルによる約65時間のロングパワーリザーブが輪列への一定の動力供給を実現した。振動数も2万8800振動/時というハイビートであった。