日付表示を備えたレギュレーター。メッキ仕上げの文字盤は3色。また防水性能も10気圧に高められた。自動巻き(Cal.C.292)。30石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SS(直径41mm)。10気圧防水。49万円。
古典時計のコレクター兼研究家であったゲルト・リュディガー・ラングは、スイスの時計産業を復活させるべく、1983年にクロノスイスを創業した。「私は大量生産されたクォーツと異なり、機械式時計には少なくとも3世代の寿命があることを信じていた」。彼が最初に手がけたのが、ムーブメントを見せるトランスパレントバックの採用である(82年)。続いて彼は、クラシカルなレギュレーターを腕時計に復活させた(87年)。当初、時計関係者はレギュレーターに懐疑的だったが、「後に150もの時計メーカーが、レギュレータータイプの時計を作るようになった」(ラング)。後にクロノスイスは様々な傑作をリリースしたが、時計業界に対するインパクトという点で、レギュレーターを超えるものはないだろう。
またラングは、レギュレーターにバー状のラグと、ケース側面のコインエッジ、そしてタマネギ型のリュウズを与えた。彼が「時計を横から見たときクロノスイスと分かるデザインを与えたかった」と述べた通り、これらのデザイン要素は、やがてクロノスイスの明確な個性となったのである。ラングが後継者に選んだオリバー・エブシュテインも、やはりレギュレーターの価値を知悉していた。クロノスイスの経営権が代わった翌年は、クロノスイスの創業30周年であった。数多くのコレクションの中で、エブシュテインが記念モデルの素材に選んだのはレギュレーターだった。
2013年にリリースされた「レギュレーター30」は、新生クロノスイスにふさわしいモデルだった。デザインの構成要素は今まで通りだが、12時位置に「デルフィス」を思わせるジャンピングアワーが備わり、文字盤のギヨシェも強調されたのである。このモデルはディスコンになったが、今なお、ほぼ同じモデルが「シリウス レギュレーター ジャンピングアワー」としてカタログにある。
エブシュテインが取り組んだのは2点である。時計のクォリティ向上と、若い層への訴求である。12年、クロノスイスは本社をミュンヘンからルツェルンに移動。翌年には工房も移転することで、品質の管理は容易になった。そして工房に導入されたエナメルの焼成機とギヨシェ旋盤は、文字盤の表現をいっそう多彩にしたのである。今やクロノスイスのレギュレーターは、文字盤でも選ぶべき時計といえるだろう。