では実際、着用した印象を述べてみたい。最も驚いたのは、ブレスレットのコマの遊び(クリアランス)が非常に大きいことだろう。これは、上下のコマが接触してセラミックスが割れにくくするための配慮だ。しかし、クリアランスはあっても、実際の装着感に支障をきたさないのはグランドセイコーらしさ。そのホールド感は比類ない。
自動巻きスプリングドライブ(Cal.9R86)。50石。約72時間のパワーリザーブ。セラミックス×ブライトチタン(直径46.4㎜、厚さ16.2㎜)。10気圧防水。155万円(税別)。
直径は46.4㎜、厚さは16.2㎜、重量は158g。実に堂々たる体躯である、しかし、ヘッドの重心が低いからだろうか、それほどの圧迫感や重量感は感じられない。オフでリラックスして過ごす日の1本として最適ではないか。
文字盤はスモールセコンドを比較的大きく9時位置にレイアウトし、その下方にパワーリザーブインジケーターを置き、クロノグラフの30分と12時間積算計を右に小さく寄せている。個人的には積算計がもう少しクローズアップされていても良いのかなと感じたが、バランスとしては、申し分ない。
セラミックスマニアが見たらうっとりしそうな質感の24時間表示式ベゼルと副時針は海外に出た時に威力を発揮しそう。時針が1時間単位で独立調整できるところも、ちょっとした機能だが実にありがたい。
ケースをサイドビューから見てもらうと分かりやすいのだが、その構造はブライトチタン製の内殻をセラミックス製の外殻で覆っている。そこにはわずかな隙間が設けられていて、落下時の衝撃を吸収するという。実地試験を行うことは、もちろん憚られるのだが……。
スプリングドライブの精度に関しては、今更だろう。平均月差は±15秒、日差にして±1秒だ。乱暴に表現すると、機械式とクォーツのハイブリッド構造といえるスプリングドライブがセイコーテクノロジーの集大成であることは言うまでもなく、調速機にヒゲゼンマイを用いていないので、機械式のような温度変化の影響や姿勢差誤差が生じる心配もない。
デザインを見て感心したのは、リュウズより一段低く設けられたクロノグラフのプッシャーだ。このデザインが節度ある雰囲気をこの時計に与えている。また、操作性はリセットボタンの感触が軽く、程よく押しもどす感覚が感じられて、実に心地よい。スプリングドライブならではの、クロノグラフ秒針の滑らかなスイープ運針も必見だ。
さらなる世界戦略を企図して発表されたグランドセイコー入魂の力作を、ぜひ手にとって体感してもらいたい。(おわり)