着用インプレッション
着用してみての第一印象は、「非常にしっくりくるサイズ感」の腕時計だということ。42mmのケース径は、個人的には視認性を阻害することのない“小ささ”であり、腕の太さに対してアンバランスにならない“大きさ”だった。まさにちょうど良いあんばいなのである。
このモデル最大の特徴である回転インナーベゼルはどうだろうか。2時位置にあるねじ込み式のリュウズを回せば、その方向にベゼルを回転させることが可能だ。つまり、このベゼルは両方向回転式ということになる。しかし現在、ISOもしくはJISに準拠してダイバーズウォッチを名乗るためには逆回転防止ベゼルの装備が大前提となっている。これは潜水時にベゼルを誤って時計回りに動かしてしまうと、実際の予定時間より短い時間しか潜水していないと認識してしまい、危険だからだ。とはいえ、ねじ込み式のリュウズで回転するインナーベゼルであれば、上記のような潜水中の誤操作はほとんど起こらないはずだ。現在ではあまり見なくなってしまった機構だが、事故防止の観点からすれば合理的なシステムだと言える。
搭載されるムーブメントはETA2824-2ベースのCal.L633だ。オリジナルモデル同様に、その姿をケースバックから拝むことはできないが、ロンジン専用仕上げがされた「エクスクルーシブ」ラインが使用されている。ETAから熟成された専用ムーブメントを安定して入手できることは、スウォッチ グループに所属するロンジンの強みだろう。
自動巻き(Cal.L633/ETA2824-2ベース)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SS(直径42mm)。300m防水。25万4000円(税別)。
と、「ロンジン レジェンドダイバー」に関して前向きな意見ばかり述べてきたが、気になる点がなかったわけではない。プレス成型によって作られた3本の針はのっぺりとしていて高級感があるとは言い難い。事故のリスクが低いとはいえ、リュウズをいちいち回さなければならない回転インナーベゼルの操作性も良いとは言えないだろう。パワーリザーブも約38時間では連休の間装着しないと止まってしまうため、どうしても物足りなさを感じる。また、基本的に視認性が良いのは前述の通りだが、反射防止コーティングが薄いのか、強い光源下においては乱反射気味となってしまう傾向にあるのが残念だ。そして一番気になったのが、風防に付いた指紋が目立つこと。これはあくまでも仮説だが、文字盤から反射された光が、風防に付着した指紋を目立たせる、いわゆる“スポットライト”として機能してしまっているのではないか。いずれにしても反射防止加工に関しては、さらなる改善を期待したい。
しかしながらルックスやサイズ感、道具としての信頼性など、「ロンジン レジェンドダイバー」が腕時計選びにおいて欠かせないツボを押さえた良作であることは疑いのない事実だ。もちろん、腕時計の評価軸は人それぞれ。しかしこの腕時計が20万円台で購入できるという事実に関しては、多くの人が評価せざるを得ないのではないだろうか。