トゥールビヨンを超えた超高精度を実際に確認する
ブレゲの超高精度機である、クラシック クロノメトリー 7727。高精度をもたらした要因は10Hzという超高振動とマグネティックピボットだ。このふたつの要素は、このクラシカルな見た目の時計に、高い等時性と極めて小さな姿勢差誤差をもたらした。筆者はスイスでその高精度を目の当たりにしたが、では実際の製品ではどうなのか?スウォッチ グループのメンテナンス部門がある銀座に出向き、納品前の7727を実際に測定してもらった。
広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
常識外れの小さな姿勢差誤差
7727を特徴付けるマグネティックピボットとは、天真を磁石で固定する試みだ。一見トリッキーに思えるが、テンワとヒゲゼンマイの重心は常に中心からぶれなくなる。また強い引力が常に天真にかかっているので、平姿勢と立姿勢で軸にかかる摩擦の状態がほぼ同じになり、“平立差”は改善される。
また10Hz(=7万2000振動)という高振動により、振動の安定性を示すQ値は大きくなり、時計は外乱に強くなる。加えて超高振動に耐えられるだけの「硬い」ヒゲゼンマイは、重心移動をさらに小さくするはずだ。
これらをデータで見た場合、どういう結果が出るのか。7727の振り角は、時計がどの向きであっても安定するはずで、また精度もほぼ一定になるだろう。果たして結果はどうだったのか?
今回のテストでは、通常の5姿勢に加えて、普通は測らない12時上でも計測を行った。高精度機の多くは、12時位置の精度を捨てて、5姿勢の精度を良くする。そのため、テスターにかけると12時位置の精度はガタガタの場合が多い。しかしテストした7727は、12時位置の精度も、ほかの姿勢とほとんど変わらなかった。つまり、天真を磁石で固定するのが効いているわけだ。
姿勢差誤差の小ささを示すのが、振り落ちの小ささだ。全姿勢を見た場合の振り角の差は、たった11度。精度は最大でも2秒しか違わなかった。しかしこれは特別な個体ではないのか、と時計師に尋ねたところ、「このまま納品する個体であり、どのモデルも同じような精度である」とのことだった。
掛け値なしに、トゥールビヨン以上の精度を持つクラシック クロノメトリー7727。では次ページ以降で、その高精度を理由をひもといていくことにしよう。