再び時代を超える「ジャガー・ルクルト ポラリス・メモボックス」

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2019.10.04

「ジャガー・ルクルト ポラリス・メモボックス」の特徴については、上記で伝えた以外にも、3つの同心円状のそれぞれに異なる仕上げが施された文字盤の構造が挙げられる。外周の回転式インナーベゼルは、滑らかなオパーリン仕上げだ。その内側の「錆びたような」ダイアルに配されるアラビア数字と台形のアプライド・インデックスは、バニラ色のスーパールミノバが塗布される。ミニッツトラックには同心円状の刻みが施されている。そしてアラーム表示がある中央の文字盤は、サンレイ仕上げとなっている。これらの装飾の組み合わせは1968年製「ポラリス」からダイレクトに着想を得たものであり、現在のタイムピースとのつながりを示すものである。

「ジャガー・ルクルト ポラリス・メモボックス」のデザイン段階でのスケッチ。

 ポラリス・コレクションのケースはシャープなラグを備えた、ヘアラインとポリッシュ仕上げの組み合わせから出来ている。3つのリュウズはオリジナルのポラリスからデザインが再考された要素のひとつである。オリジナルのクロスハッチ・パターンと異なり、「JL」のロゴと合わせて操作性向上のため見直しを図られている。

ケースのヘアライン仕上げ部分。

1968年製と同じ直径を持つ42mmのケースサイズには、ストライキング・メカニズム搭載のジャガー・ルクルトのキャリバー956が収められている。このキャリバーは、ジャガー・ルクルトによって1950年代に開発された自動巻きアラームムーブメントの系譜を継いでおり、約45時間のパワーリザーブを持つ。

「ジャガー・ルクルト ポラリス・メモボックス」着用時の画像。

 直径42mmのケースサイズの選択は素晴らしい。アラーム音を増幅させるためケースに厚みが持たされており、着用時に重心が上にくる印象があるのだが、この構造によって、アラーム音量は着用時よりも着脱時の方がずっと大きくなる。しかし15.9mmのケース厚はドレスシャツとの相性はあまりよくなく、手首が細い場合には時計が大きく見えるだろう。一方、クル・ド・パリ模様が施されたラバーストラップは、着け心地を格段によくしてくれている。なお、バックルはステンレススティール製である。

ラバーストラップのクル・ド・パリ模様。

 ケースバックには「ポラリス」の50周年を記念する刻印がダイバー用ヘルメットと一緒にデザインされている。

 140万円(税別)という価格は高めの設定だが、限定モデルという事実と内容から適切であると思われる。「ジャガー・ルクルト ポラリス・メモボックス」は貴重なアラームウォッチの中でも特に特別な存在であるだけでなく、時計単体として見ても美しい時計である。1960年代当時、既に時代を超越したデザインを持ち、そのスタイルは現在も新鮮で個性を放っている。魅力的な点はたくさんあるが、50年前と同じように斬新ながらも受け継がれた部分があり、そして現代でもその独自性が保たれている。

「ジャガー・ルクルト ポラリス・メモボックス」のケースバック。