数少ないモンブランの高級スマートウォッチ、サミット 2/本田雅一、ウェアラブルデバイスを語る

モンブラン サミット 2

モンブラン「サミット 2」
サテン仕上げを基調にポリッシュを一部に用いる2種類の仕上げが与えられたケースや、イタリア・フィレンツェの自社工房製レザーストラップなど、モンブランの時計づくりを踏襲した外装を持つ高級スマートウォッチ。盤面デザインには主に「モンブラン 1858」コレクションのデザインコードが用いられているが、女性の使用を考慮して「モンブラン ボエム」フェイスも用意される。wear OS。Snapdragon Wear 3100。SS(直径42mm)。11万5900円(税別)。

新型チップ搭載でスムーズな操作性と長時間駆動

 電子デバイスとしてみた場合も、今年のwear OS採用スマートウォッチ上位モデルの定番チップであるSnapdragon Wear 3100を搭載することで、腕時計としての使いやすさを高めている。とりわけバッテリー持続時間は、安心して使えるだけの駆動時間を確保した。

 Snapdragon Wear 3100は2019年発売モデル向けに米クアルコムが提供しているスマートウォッチ向けSoC(システム一体型LSI)で、フォッシルが第4世代プラットフォームとして採用するなど、多くの製品で使われているものだ。

 そんなチップを搭載するサミット 2は消費電力抑制の工夫がいくつか盛り込まれている。例えば「Traditional Watch Mode」はスマートウォッチとしての機能を制限し、時刻を知らせる機能だけに特化することで、超低消費電力を実現するというものだ。

 しかしサミット 2は一般的なスマートウォッチの使用方法、すなわち定期的に心拍数を計測するアプリケーションを導入し、さらにさまざまなアプリの通知を表示させる設定で稼働させたとしても、朝外出し、夜に帰宅するまでの間なら十分に使えるだけのバッテリーが搭載されている。

 これは、多分に自動巻きクロノグラフを思わせるケースの厚みがバッテリー容量の面でプラスに働いているのだろう。また、クアルコムが最新SoCでバッテリー持続時間の改善を掲げていた点も無関係ではないはずだ。つまり、全体の消費電力自体も小さくなっているということだ。その上で、設定画面で“バッテリーセーバー”モードに移行する電池残量を任意で指定すると、バッテリー残量が少なくなった際にTraditional Watch Modeへと自動的に入る。

 このモードになると、たとえバッテリー残量が1桁台になったとしても、数日間は腕時計としての機能を失わない。モンブランによると、省電力モードでは最長約5日間、腕時計として使えるそうだ。

スナップドラゴン

モンブラン「サミット 2」にも搭載されるクアルコム製SoC、Snapdragon Wear 3100。2019年7月現在、Wear OSを搭載するスマートウォッチの上位機種で多く用いられる。1.2GHzクアッドコアArm Cortex A7。Adreno™ 304 GPU。802.11n規格Wi-Fi。Bluetooth 4.2。GPS。USB 2.0。

 一方で、前作のサミットからパフォーマンスは向上しており、リュウズ操作によるメニューのスクロールといったごく身近な操作感も含めて快適に利用できる。同じチップでも製品によってはパフォーマンスに差が出るものだが、サミット 2は極めて滑らかだ。

 Snapdragon Wear 3100が省電力化を達成したことで、ケースサイズを大幅に小型化しているモデルもあるが、サミット 2のケースサイズの小型化は42mm(サミットは46mm)に留まる。厚みも一般的な42mmケースの機械式クロノグラフならばこのぐらいだろう……という常識的なサイズのため、同じチップ採用スマートウォッチの中でも比較的長い駆動時間を得ることができたに違いない。

 Apple Watch series 4と比較すると、“スマートウォッチとして使える”バッテリー駆動時間にはやや見劣りする一方で、Traditional Watch Modeモードがある分だけ、充電し忘れなどの“非常事態”には強いという見方もできる。

“トラディショナル”と“スマート”

 すなわち、サミット 2は“時計を知るメーカー”らしいトラディショナルなルックスと高級時計に匹敵する装着感を持ちつつ、中身は最新のwear OS向けプラットフォームを採用。バッテリー持続時間も十分で、見事にトラディショナルとスマートを融合した製品だ。

 最新のwear OSを搭載しているため、とりわけグーグルのサービスと相性よく、一般的な腕時計では知ることができない天気予報、スケジュール、次のフライトや宿泊予定地などの情報に手早くアクセスし、各種アプリの通知をユーザーに知らせることが可能である。

 スマートウォッチなのだから当たり前とも言えるが、着実にアップデートを重ねてきたwear OSのフル機能を、視認性が高いOLEDディスプレイや操作のしやすいリュウズのデザインで扱えるのだから、同種の製品において選択肢の上位に来ることは間違いないだろう。

 しかし、釈然としない部分も感じる。

 ウォッチフェイスのうち、最も使用されるであろう「1858」は規定値でマットブラックの盤面が設定されるが、好みに合わせて色を選択すると、見返しの目盛りと色がなじまない場合も出てくる(見返しのカラーはホワイトもある)。

 また、これは本機だけの問題ではないが、トラディショナルな盤面をフラットなディスプレイに表示する場合、金属加工や多様なカラー、素材をレイヤーで重ねることで立体感を出した盤面を、ディスプレイ表示だけで表現すると、どうしても偽物感が出てしまう。

 光の角度などによって表示が変化するわけではないため、これは当然のことなのだが、それが分かっているからこそサミット 2はデフォルトで、あえてフラットなブラックの盤面を選んでいるのではないか。

モンブラン サミット 2

 もちろん、これはあくまで“僕の観察”でしかないが、スマートウォッチの世界とトラディショナルな腕時計の世界観を融合したいのであれば、“ディスプレイの特徴を生かした”上で、あえてフラットデザインで本機の佇まいに似合う盤面を実現したいと思うのはワガママだろうか。

 無論、サードパーティー製の盤面選択アプリなどをインストールすれば、多様な盤面デザインを楽しめる。しかし、せっかく見返し部に目盛りを刻み、それを前提にトータルのバランスを取っているのだから、数種類は同様にサミット 2ならではのデザインを生かした盤面が欲しい。

 ディスプレイ表示であったとしても、腕時計然とした佇まい。トラディショナルとスマートの融合とは、レイヤー構造での立体的な造作を行えない平面ディスプレイを用いながら、そこに機能的な美しさを感じさせることなのかもしれない。

 幸い、盤面はアップデートが容易だ。今後の展開に期待したいところである。

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