数少ないモンブランの高級スマートウォッチ、サミット 2/本田雅一、ウェアラブルデバイスを語る

インターチェンジャブルのストラップは“ファッション向け”のみに非ず

 ところでサミット 2は、フィットネス機能に力を入れているとのことだが、この点はやや厳しく評価したい。

 専用アプリとして独自の「Fitness Coach」がプリロードされているが、機能やユーザーインターフェイス、フィットネス時の情報表示などを考えるに、他アプリを用いる方がいいだろう。GPSを捕まえる速度もなぜか遅い。Google Fitも含め、一般的なランニングウォッチやApple Watchの標準フィットネス機能と同等レベルになってほしいものだが、そこは別のアプリをインストールすれば良い。

 すなわち、ある程度の精度を持つ心拍計、GPS、加速度センサーなどがあれば、あとは好みのアプリをインストールすれば済むのだ。そして、サミット 2にハードウェア面での不満があるとするなら、日本でのGoogle Pay対応がされていないことぐらいだろう。

 しかし、モンブランがオン/オフ両方をカバーするスマートウォッチを作って行くのであれば、プリロードするアプリではなく腕時計メーカーとしての設計というアプローチで対応してほしい。

 スマートウォッチは、そもそも“ハイブリッド”な製品だ。つまり、時を知るだけでなく、スマートフォンに届くあらゆる情報と連動し、アプリを動かしてさらに高い利便性を手に入れることができる。ここに伝統的かつスタイリッシュな腕時計のルックスを融合させられないか? が前述のテーマだったが、ファッションウォッチとフィットネスウォッチのハイブリッド化は、Apple Watchの例を出すまでもなく当然望まれることである。

 では“ファッションとしての腕時計”と“ウェルネス・フィットネス向け腕時計”を両立する上で大切なこととはなんだろうか?

 ケースの仕上げと軽量化、そしてストラップ。こうした部分の設計と用途を限定せず、どんなシーンでも快適に使える実用性。そんなこれまでの腕時計づくりを経て蓄積したノウハウを盛り込んだ設計を望みたい。

 中でもインターチェンジャブルストラップの仕組みは必須だ。

 サミット 2は爪で簡単にバネ棒のロックを外すことができる、いわゆるアビエ式のストラップを採用している。さりとてスーツに合うフォーマルなレザーストラップと、スポーツに適したナイロンストラップの付け替えには、まだそれなりのハードルがある。

モンブラン サミット 2

テストモデルはSSケースにブラックレザーストラップの組み合わせ。ほかにもラバーストラップ(写真左)やナイロンストラップ(写真中)、そしてミラネーゼブレスレット(写真右)などが選択可能。いずれもアビエ式のためバネ棒外しなしで交換が可能だが、Apple Watchやウブロのような、本体側にワンタッチで取り外し可能な機構を有したものと比べると若干手間が掛かる。

 Apple Watchやウブロのように、その時の気分と利用シーンに合わせて選べ、さらにストラップ側ではなく本体側で簡単にストラップを交換できる機構を採用することで、ファッションだけでなくスポーツシーンなどにもマッチさせることができる。あらゆる要素が入り込み、利用シーンも広いスマートウォッチだからこそ、ここには工夫が欲しかった。

 簡単にはいかないかも知れない。しかし、簡単ではないからこそ取り組む価値もあろうというものだ。


本田雅一
本田雅一(ほんだ・まさかず)
テクノロジージャーナリスト、オーディオ・ビジュアル評論家、商品企画・開発コンサルタント。1990年代初頭よりパソコン、IT、ネットワークサービスなどへの評論やコラムなどを執筆。現在はメーカーなどのアドバイザーを務めるほか、オーディオ・ビジュアル評論家としても活躍する。主な執筆先には、東洋経済オンラインなど。


Contact info: モンブラン コンタクトセンター Tel.0120-39-4810