鈴木裕之:取材・文 Text by Hiroyuki Suzuki
CEO Interview
ベヌー発表からの約10年間でモリッツ・グロスマンはどう変わったのか?
モリッツ・グロスマン CEO
2010年9月に完成したベヌーのプロトタイプから、新生モリッツ・グロスマンの歴史は始まった。それから約10年を経て、同社はコレクションラインの統合を図っている。その概要は、既存のラインナップを「ベヌー」と「テフヌート」の2ラインに集約。第2世代ムーブメントを搭載するアトゥムの登場以降、その名が消えていたベヌーラインの復活は正直嬉しい。旧アトゥム系やデイト、GMT、バックページ、トゥールビヨンなどすべて、ベヌーラインのコンテンポラリーモデルという位置付けだ。こうしたコレクションの再統合は、この10年で飛躍的に増えたリファレンス整理が目的である。「モリッツ・グロスマンはヨーロッパの他、北米、中東、そして日本で展開していますが、市場によって顧客の好みは大きく異なります。我々はそれほど大きな生産キャパシティを持つわけではないので、マーケットごとの別注品や、顧客からの特注品も多い。また設計者が3人に増えたので、開発スピードも上がりましたね」
同社の年産数は約400本。将来的には800〜1000本を上限とする増産計画もあるようだが、現状ではそれほどの年産数は達成していない。つまり約10年での変化という点では、より多品種少量生産の傾向が強まったと言える。「我々は何より、手仕事による高いクォリティを保つことを大切にしていますので、急激に生産数を増やすことはできません。しかし2年前と比べても、人員は着実に増えています。新しい時計師は、まず仕上げ部門で6〜8カ月のトレーニングを受けてから、組み立てを受け持ちます。これは仕上げに要する手間と時間を理解していない時計師が多いため。また全員が仕上げのスキルを持っていれば、何かあった際にも部門を跨がずにリカバリーすることができます。モリッツ・グロスマンには、専任の時計師はひとりもいません。全員があらゆる仕事をできるよう、技術の共有を目指しています」
元時計師でもあるクリスティーネ・フッターは、社員からの発案にも耳を傾ける。例えばツイストは開発部門ではないスタッフの発案、GMTはエンドカスタマーのアイデアがベースだ。「今回は既存コレクションを2本の柱に集約しましたが、将来的には3本柱にする予定です。3本目の柱は、従来とは全く趣きの異なるものですが、典型的なモリッツ・グロスマンだと感じていただける仕上がりになるはず。2〜3年のうちには、ご覧に入れることができるでしょう」
工房のキーパーソン
開発部門
[開発部門/主任設計士]
[開発部門/設計士、マイスター時計師]
[開発部門/設計士]